将棋の藤井聡太8冠(21)の師匠、杉本昌隆八段(55)が15日、名古屋市役所で行われた名古屋市文化芸術特別表彰「金シャチ賞」の表彰式に出席した。

同賞は昨年10月に史上初の全8冠制覇を達成した藤井ら後進の育成に貢献した杉本の指導者としての功績と、市の将棋文化の普及促進に貢献したことをたたえようと、名古屋市が創設した。同市出身の杉本は名古屋市内で将棋研究室を開き、これまでに藤井ら5人のプロ棋士を育てた。

記念品として、市の伝統工芸品「名古屋扇子(名古屋黒紋付染(くろもんつきぞめ))」を贈呈された杉本は「金シャチは名古屋市民にとってなじみ深く、第1号になれたことは光栄です」と喜んだ。

これまで師匠として藤井の初タイトル獲得後の会見などには同席することもあった。「藤井8冠とはいっしょに囲み取材を受けたこともあるが、1人で受けるのは初めて。隣に藤井8冠がいないので落ち着かない」と笑わせた。

指導者として最も気をつけいることは「教える、教わるの関係ではなく、対等な立場で向き合いたい。先輩としてアドバイスできることは多いが、それが押しつけになってはいけない。若い人の考えている言葉を引き出すことです」と明かした。

「金シャチ賞」受賞を藤井に伝えるかについては「何かの形でみてくれるのかな」と“期待”し、もし弟子が師匠の“偉業”に気づかなかったときには「藤井竜王・名人なので、“杉本金シャチ”を名乗ろうかなと思います」とジョークで笑わせた。

河村たかし市長は「(藤井8冠は)織田信長だがや」とほめ、杉本に「若きリーダーを育てられた。好きなことをやり抜いているのは子どもにとって一番重要。好きなことを徹底的にやってもらえるように名古屋市もそう努力をしていきたい」と話した。【松浦隆司】