立憲民主党の杉尾秀哉参院議員は16日、日本の国旗を傷つける行為を罰する「国旗損壊罪」法案の審議が行われた参院内閣委員会で、法案の共同提出者の1人で、成立なら「愛国心の醸成」につながると発言し、野党に批判されている日本維新の会の阿部圭史氏に対し、維新創業者で大阪府知事や大坂市長を務めた橋下徹弁護士の厳しいコメントを突きつけるひと幕があった。
阿部氏は6月の衆院内閣委員会で維新議員からの質問に、「成立を契機に国民が自国への帰属意識、一体感を抱くことで、国民の気持ちの上での統合の役割を果たす国旗の意義がますます向上する」とした上で、「今後、一層国旗を大切にする気持ちが醸成され、愛国心も醸成されていくと考えている」と述べた。一方で、憲法が保障する「内心の自由」を侵害する恐れがあるのではないかとして、野党からは撤回を求める声が出ている。
杉尾氏はこの日の委員会で、阿部氏に発言を撤回するかしないのかと再三問いただしたが、阿部氏は正面から答えず「私自身の政治信条に関する答弁をした」とした上で、2分近く持論を展開したり、「提案者としての説明と政治家としての個人的な心情の区別が分かりにくかったなら、遺憾でございます」などと繰り返した。
杉尾氏は「そういう回答をされるんだったら、この法案は先に進められない。そういう、いいかげんな人たちが出してきている法案と、見なさざるを得ない」と指摘しながら、橋下氏が7月12日に放送された民放番組でこの発言についてコメントした内容に言及。橋下氏はこの時、「どの国会議員も、『それを言ったらおしまいでしょ』って、言わなかった。維新は堂々と言った。これは思想的には中国とまったく同じ」などと批判的に論じていたが、杉尾氏は「みなさんの(党の)創業者の橋下徹さんは、法案に反対の立場を表明した上で、『愛国心の醸成を言ったらおしまいだ』と言っているんです」と触れた。
また「思想的には中国とまったく同じではないかと。(維新の)みなさんは中国を批判されているが、やろうとしていることはそれと同じではないかと、おっしゃっている」とも指摘した。
その上で「あなた方がしようとしていることは、国旗への尊崇の念を通じて、国民に愛国心を持たせ、それを刑罰をもって実現させようとしていることにほかならない」とただした。阿部氏は「法案提案者としては、本法案はあくまでも国旗の損壊など、そして外形に表れた客観的な行為を処罰の対象とするもので、個人の内心に立ち入ってその行為の基礎となった思想や信条を処罰するものではない」などと反論するにとどめた。
杉尾氏は「こういう不誠実な答弁を繰り返すなら、採決に応じられない」とし、14日に行われた参考人3人からの意見聴取で2人の法学者が「違憲立法」と指摘したと述べ、自民党の塩崎彰久議員に「専門家の意見はどこまで聞いたのか。今回は、内閣法制局も法制審も通しておらず、議論のプロセスを経ずにいきなり法案を出して自分たちの考えを押しつけている」と指摘。「あなたたちは法律の専門家なのか。法学者なんですか、憲法学者なんですか、刑法学者なんですか」とまくしたて、「自分たちの思いだけでこういう法律を作って、これがどういう影響を社会や日本の国に及ぼすのか、そこまでしっかり議論した上で、この法案を出しましたか」と、ただした。
塩崎氏が「さまざまなご意見があり得ることを踏まえ、政府から提案するより、国民の意思を代表する立法府で案が作成されることがより適切だと考えて、議員立法で提出した。その過程から、政府の内閣法制局を通すものではないが、検討の過程では衆院法制局やさまざまな専門的見地からの検討を踏まえた上で、提出している」と応じたが、杉尾氏は「中身はスカスカじゃないですか。みなさんは責任を持ってやっているという自覚が、あまりにも足りない。だからこそ、維新の阿部議員のような発言が出てくる」と、怒りが収まらない様子で質問した。
法案は与野党による質疑後に採決が行われ、与党などの賛成多数で、委員会で可決された。

