オークス馬チョウカイキャロル(牝4、栗東・鶴留)、そして真の女王の座を狙うヒシアマゾン(牝4、中野)との直線の攻防はすさまじいばかりだった。結果は写真判定に持ち込まれ、ハナ差でヒシアマゾンが勝ち、史上4頭目の重賞6連勝を達成した。着差こそわずかだったが、終始大外を通ったレース内容からケタ違いの強さ、女傑など称賛の声が高まっている。いよいよ次は12月25日の有馬記念で、3冠馬ナリタブライアン(牡4、栗東・大久保正)に挑戦する。中野隆良(たかお)師(53)は昨年のホクトベガに続いて2連覇、中館英二騎手(29)は初制覇。
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重賞6連勝で有馬記念を目指そうというヒシアマゾンが、淀(京都競馬場)の直線でオークス馬チョウカイキャロルと300メートルの激しいデッドヒートを繰り広げる。場内13万の歓声が最高潮に達する。チョウカイキャロルが先頭に躍り出た。その外から必死の形相で追うヒシアマゾンの中館。2400メートルの長距離戦は鼻面を並べてのゴールインとなった。10分近い長い写真判定。やっと浮かび上がった数字は“6”。ハナ差。ヒシアマゾンだ。「いやー、こんなに写真判定が長いとは……。ヒヤヒヤもんだったよ」と、昨年のホクトベガに続きこのレース2連覇を果たした中野隆良師は、ホッと胸をなで下ろした。
勝ちタイムは2分24秒3。昨年ホクトベガが記録したレコードを0秒6も上回るレースレコードだ。殊勲の中館英二騎手は「勝ったとは思ったけど、ゴール前はヒヤッとした。もう少し余裕があれば、ガッツポーズでもできたんだけどね」と苦笑い。わずか3センチほどだが、陣営にとってはとてつもなく大きな差だった。これで重賞6連勝。メジロラモーヌ、オグリキャップ、タマモクロスと肩を並べ、名馬の仲間入りだ。
単にオークス馬に勝って4歳NO・1の座を手に入れただけではない。12月25日の有馬記念で3冠馬ナリタブライアンと対決する資格を手に入れた。5歳の主役(ビワハヤヒデ、ウイニングチケット)が引退し、有馬記念はナリタブライアンの独壇場になってしまう状況だった。中野師は「3冠馬というスターホースが誕生した。でも、競馬を盛り上げるためには、相手になる強い馬が必要なんです。だからヒシアマゾンには、ここを勝って6連勝でドリームレースに出走させたかった」と、胸の内を熱く語る。
5冠馬シンザンがそうだった。決して大きく離して勝つことはないが、確実に勝った。「シンザンと同じ勝ち方だな」と、中野師は5冠馬にイメージをダブらせる。今回の作戦は好位からの予定だった。しかし、スタンド前では15番手のポジション。「バースルートが離して逃げていたからね。心臓に悪かったよ。でも、馬自身が“最後に先頭でゴールすればいいんでしょ”と、分かっているようだね」とレースを振り返る。勝つことを知っているサラブレッド、それがヒシアマゾンだ。
さあ、次はナリタブライアンとのクリスマス決戦だ。「向こうは自在の競馬ができるからね。負ければ、牡馬と牝馬の差かもしれない。でも……」。言葉をグッとのんだ中野師の顔は、チャレンジ精神のかたまりに見えた。【多田薫】
◆ヒシアマゾン▽父 シアトリカル▽母 カティーズ(ノノアルコ)▽牝4歳▽馬主 阿部雅一郎氏▽調教師 中野隆良師(美浦)▽生産者 M・アベ▽戦績 11戦8勝▽主な勝ちクラ 93年阪神3歳牝馬S(G1)94年クイーンC(G3)クリスタルC(G3)ニュージーランドT4歳S(G2)クイーンS(G3)ローズS(G2)▽総収得賞金 4億2914万4000円
(1994年11月14日付 日刊スポーツ紙面より)

