アイルランドのステートオブレスト(牡4、J・オブライエン、父スタースパングルドバナー)が鮮やかに逃げ切った。世界を駆け巡る「グローブトロッター」が、米国のサラトガダービー、オーストラリアのコックスプレート、フランスのガネー賞に続き、4カ国目のG1制覇(4勝目)を果たした。

5頭立てで逃げ馬不在の顔ぶれ。最内枠でスタートを決めると、果敢に先手を主張した。直線を向くと手応えの怪しくなった2番手のシャフリヤールを突き放し、外から伸びてきた1番人気ベイブリッジの猛追を封じた。

殊勲のシェーン・クロース騎手(20)はロイヤルアスコット開催初勝利。「少頭数の1番枠でしたし、ジョセフ(J・オブライエン師)と難しいレースプランの相談はしていません。堂々とステートオブレストの走りをするだけでした。彼はこの1年、素晴らしいことを成し遂げてきました。そして、またやってくれました。夢みたいです。言葉にできません」と勝利を喜んだ。

ジョセフ・オブライエン師(29)は騎手時代の12年にソーユーシンクでプリンスオブウェールズSを勝利しているが、今回は調教師としてプリンスオブウェールズS制覇。調教師としてロイヤルアスコット開催初勝利となった。

「シェーン(クロース)が最高に乗ってくれました。ステートオブレストはタフな馬です。出走を決めるために、いい会話をしてきました。スペシャルですね。ロイヤルアスコットで勝つために時間がかかりましたが、勝てただけでなく、プリンスオブウェールズSですから最高にうれしいです。ステートオブレストは最高の馬だと、自分自身で証明してくれました。とても自在性のある馬で、前走(タタソールズゴールドC、3着)で結果が出なかったことには責任を感じていましたが、いい走りでしたし、チャンスがあると思っていました。シェーンが信じられない騎乗をしてくれました。素晴らしい日になりましたし、チームのみんなを誇りに思っています」。

名伯楽エイダン・オブライエンの長男として、騎手時代に数々のビッグレースを制してきたのがジョセフ・オブライエン。そのジョセフが重用する若手騎手が20歳のシェーン・クロース(20年のフィリーズマイル、21年のプリティーポリーS、今年のガネー賞に続くG1・4勝目)。

ダービー馬シャフリヤールによる日本馬初のロイヤルアスコット制覇は、残念ながら果たされなかった。アイルランドからやってきたステートオブレスト、ともに20代の若き名手と調教師が今年のプリンスオブウェールズSの主役だった。