デビュー5年目・団野大成騎手(22=斉藤崇)騎乗の12番人気ファストフォース(牡7、西村)が直線で抜け出し、人馬ともにJRA・G1初制覇を飾った。

管理する西村真幸調教師(47)にとっても初のG1タイトル。雨の不良馬場をものともせず、力強い末脚で2着ナムラクレアを1馬身差で振り切った。次走は未定だが、スプリント界に7歳の“新星”が誕生した。

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ゴールの瞬間、団野騎手は左手を思い切り振り下ろした。その後、小さくガッツポーズを作り、愛馬の首をたたいてねぎらう。初めてG1を勝った。「本当にずっと勝ちたかった。勝ててほっとしていますし、うれしいです。この馬に乗せていただいて感謝の気持ちでいっぱいです」。泥だらけの勝負服でそう言った後、反省の弁も口にした。「自分の誘導のミスで(他馬の)邪魔をしてしまった。本当に反省したいです」。

道中は中団の外。じわっと位置を上げ、先団を追う形で直線へ。不良馬場をものともせず、馬群を割って先頭に立った。外からナムラクレアが追ってきたが、ジョッキーのアクションに応え、最後のひと伸びで突き放した。鞍上は「反応はとても良かったです。普段の調教でやっていることが生きました」とたたえた。

デビュー5年目。鍛えてきたキャリアで馬場を読んだ。自身が騎乗したこの日前半の芝レースに加え、他のレース結果も分析。西村師と対策を練った。結論は「前に行くことは前提。外枠を生かす競馬。直線は(ラチから)4分どころ。4~5頭目を通る」。導き出したプランを忠実に実行して結果を出した。

ファストフォースはデビュー6戦未勝利で地方に転厩した。再転入後の初戦でJRA初勝利を挙げたのは4歳夏。G1初挑戦は5歳のスプリンターズS(15着)だった。苦楽を共にしてきた西村師は「未勝利を勝たせられなかったのは自分の技術不足。戻ってきた時、この子の一番合う適性で走らせようと。それができて重賞も勝てたし、G1にもつながった。すごくうれしいです」と静かに語った。

今後に注目が集まるが、次走は未定。「オーナーと相談してからです」と師。7歳にして頂点に立ったスプリンターのさらなる進化が楽しみだ。【網孝広】

◆ファストフォース ▽父 ロードカナロア▽母 ラッシュライフ(サクラバクシンオー)▽牡7▽馬主 安原浩司▽調教師 西村真幸(栗東)▽生産者 三嶋牧場(北海道浦河町)▽戦績 29戦7勝(うち地方4戦3勝)▽総収得賞金 3億1384万7000円(同212万円)▽主な勝ち鞍 21年CBC賞(G3)▽馬名の由来 第一の力