史上7頭目の3冠牝馬リバティアイランド(牝3、中内田)が“自己最高”の状態で頂上決戦に挑む。ジャパンC(G1、芝2400メートル、26日=東京)に向けて22日、栗東トレセンで最終追い切りが行われた。馬なりで自己最速となるCウッド6ハロン80秒7-11秒0を計時。またがった川田将雅騎手(38)も中内田充正調教師(44)も秋華賞以上の出来と認めた。

    ◇    ◇    ◇  

最上の走りを見せた。馬上の川田騎手がほとんど上体を揺らすことなくなめらかに直進する。まるでレッドカーペットの上を進むかのよう。主演女優たるリバティアイランドは深紅の馬服をまとい、さっそうとCウッドを駆け抜けた。1秒も先行させた僚馬レッドラグラス(古馬1勝クラス)を並ぶ間もなくかわして2馬身の先着を果たした。

川田騎手 ある程度しっかり追い切って、とてもいい内容で終われたのではないかと思います。秋華賞の時は、とてもいい状態だったというわけではなく『1度使って変わるんだろうな』と感じる返し馬やレース内容でしたので。

3冠達成の前走ですら、最高の状態ではなかった。比較を問われた鞍上は「はい、良くなりました」と即答。数字を求めた追い切りではないとはいえ、自己最速の6ハロン80秒7-11秒0を計時した。しかも馬なりだ。中内田師も「雰囲気も体の張りも良くなり、それに伴って動きも良くなったと思う。間違いなく秋華賞より馬自身が良くなっている」と言い切った。

舞台も最適だ。さかのぼること半年前。同じ府中2400メートルのオークスで、未来を占う“試験”が課されていた。すでに独走に入った残り200メートルで、あえて手綱を緩めず最後まで走り切らせた。距離適性を見極めるためだ。結果はレース史上歴代2位の走破タイム2分23秒1で6馬身差の圧勝。名手も「オークスの時点で『ジャパンCへ向かえるな』と思えました」と確信した。世界王者イクイノックスに対して4キロ減の負担重量54キロも魅力に映る。

最高到達点はまだ見えない。前走の4コーナーでも本来と逆の左手前で走る場面があった。トレーナーは「3歳馬らしい緩さや精神面の幼さもある。数字で何割というのは難しいけど、成長の余地はまだ十分にある」と見込む。年度代表馬決定戦ともいえる23年最大のコンペティション。まだレディーになりきらない「お嬢さん」が主役を奪おうとしている。【太田尚樹】

◆オークスの走破タイム 歴代2位の2分23秒1は「名牝の域」だった。2分24秒を切った1着馬は、12年ジェンティルドンナ(2分23秒6)、18年アーモンドアイ(2分23秒8)、19年ラヴズオンリーユー(2分22秒8)、22年スターズオンアース(2分23秒9)との計5頭だけ。ラスト1ハロンのレースラップ11秒5も、正確な記録が残る86年以降で最速だった。過去に3歳牝馬のJC優勝はジェンティルドンナ、アーモンドアイの2頭だけ。