騎手は常に危険と隣り合わせの職業である。4月10日、藤岡康太騎手(享年35)が落馬事故で逝去。その後も落馬負傷で休養を余儀なくされる騎手が複数人いた。そんな中、注目されているのがケガのリスクを軽減できると期待されているエアバッグ付き保護ベストだ。今回の「ケイバラプソディー」は、そんな保護ベストの導入に携わった小牧加矢太騎手(27=音無)を取材。同ベストを着用することで得られる効果や、性能について聞いた。
もう誰もケガをする姿は見たくない。平地以上に落馬のリスクが高い障害競走の小牧加騎手は、デビューした2年前から対策を考えてきた。そのひとつが「エアバッグ付き保護ベスト」の導入だ。
小牧加騎手 最近は騎手の落馬が多いですし、障害騎手でも復帰に時間を要すケガにつながる落馬が増えているので、昨年から高田騎手など障害騎手らで話し合い、乗馬では一般的に使われている保護ベストの導入を進めてきました。
エアバッグ付き保護ベストとはどういうものか。それは、馬に置く「鞍」のフォルダーという位置にひもをつけ、反対側の先を騎手のプロテクターの右下腹部に装着。ある一定の距離で人と鞍が離れる(落馬する)と、ベストに付いている小さなボンベからガスが噴出され、エアバッグが膨らむという仕組み。落馬した時の衝撃を和らげ、ケガのリスクを軽減できる。
騎手になる前、馬術の選手として活躍していた小牧加騎手は、その効果を実感している。以前、ある乗馬クラブでインストラクターとして働いていた同騎手は、利用客に同ベストを導入。それまでは毎年のように、数人が落馬で骨折などの大きなケガをしていたが、負傷者が初めてゼロになったという。
「馬は生き物ですし、落馬自体はありましたが、大ケガはなくなりました。大事なところを衝撃から守れますし、エアによって膨らむことで、体がうまく回転し、衝撃の分散を促すことにもなりますから」。
今年の4月から、エアバッグ式保護ベストが試験導入されることとなった。調教中に障害騎手が着用してもいいというもの。レースでの導入へ、大きな一歩が踏み出された。
「勝負服の改良や、エアバッグのぶん重量が1キロくらい増えることなど、まだ課題はありますが、命は何においても変えられないですから。みんなが長く騎手を続けられるように、早く実現できれば」。
全人馬ともまずは無事に-。ケガのない競馬開催が常に行われる未来を願うばかりだ。【藤本真育】
(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)




