初勝利の次は重賞初制覇だ-。短期免許でドイツから来日中のレネ・ピーヒュレク騎手(36)は先週の日曜中山最終レースでうれしいJRA初勝利を挙げた。今週はAJCC(G2、芝2200メートル、21日=中山)のシルブロン(牡6、稲垣)でJRA重賞初制覇を目指す。

勝利の味は格別だった。関係者も待望していたピーヒュレクの初勝利。「勝利の夜はどのように祝ったのか」と問うと、本人はちょっと照れた顔でつぶやいた。「ミソスープ(みそ汁)」。通訳の安藤裕氏も笑顔で伝える。「彼は日本のおみそ汁が大好きなんです。初めてきたときにそのおいしさに衝撃を受けたみたいで…。だから、先週の日曜に勝って、夜は新宿でお祝いのみそ汁を飲んで。今週も(身元引受の)栗田師と一緒に夜ご飯を食べたのですが、一番おいしかったのはみそ汁です。好きな具? 具ではなく、とにかくみそ汁のスープの味が最高なんだそうです」。

トルカータータッソで凱旋門賞を制覇したドイツの名手。AJCCでまたがるシルブロンは1週前追い切りで感触を確かめた。「先生(稲垣師)からも状態はいいと聞いていましたが、そのとおりグッドコンディションですね。前走(ステイヤーズS7着)で騎乗したトム(マーカンド)が距離を縮めるのはいいと言っていました。コーフィールドCを勝ったメールドグラースの弟という血統は今日聞きましたが、その血統を証明できる走りを日曜に見せられれば」と意気込む。

短期免許取得は今回が初めてだが、初来日は14年秋。当時は騎手としてではなく、ジャパンCに参戦したアイヴァンホウの調教担当だった。その後、先輩のミナリク騎手(昨年死去)から日本の素晴らしさを何度も聞いてきた。私生活では一昨年のバーデン大賞覇者メンドシーノを管理する女性調教師、シュタインベルク氏とパートナーだが、今回は彼女の来日予定はないとのこと。「まだ納得できる結果は出せていませんが、毎週乗せてもらい、先週より今週、昨日より今日と日々少しずつですが、アジャストできてきていると思う。もちろん、もっともっと学んでいかなければ、と思っていますよ」。貪欲な姿勢で勝利を奪いにいく。【木南友輔】

◆レネ・ピーヒュレク 1987年4月24日、ドイツ生まれ。04年に同国で騎手免許を取得。21年には凱旋門賞をトルカータータッソで制覇した。昨年は独ダービーを勝利するなど56勝を挙げ、ドイツリーディングで2位となった。今年初めてJRAの短期免許を取得。169センチ、54キロ。JRA通算32戦1勝。