初挑戦から30年-。レジェンド武豊騎手(55)が11度目の凱旋門賞(G1、芝2400メートル、6日=仏パリロンシャン)挑戦で悲願に挑む。今年はキーファーズの松島正昭代表(66)が共同所有するG1・2勝の欧州馬アルリファー(牡4、J・オブライエン)に騎乗。連載「30年目の凱旋」で第一人者の執念に迫る。【取材・構成=太田尚樹】
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あの日のことは決して忘れない。忘れられそうにもない。94年10月2日。当時25歳のユタカ・タケは、かつてロンシャン競馬場の名物だったガラス階段からパドックへ下りた。すぐさまカメラの放列に取り囲まれる。凱旋門賞初騎乗のパートナーは前年の2着馬ホワイトマズル。現地での注目も当然だった。
「今でも鮮明に覚えている。すごい人だかりになって、調教師との打ち合わせもたいしてできなかった」 流れにのみ込まれるようにして迎えたゴールは6着だった。欧州の新聞には騎乗への批判も書かれた。
「初めての時はよく分かっていなかった。欧州での経験も少なかったし、ロンシャンで乗ったこともほとんどなかった。その時と今では違う」
あれから30年。50代の半ばを過ぎた今も、変わらぬ姿勢と情熱で馬と夢を追い続けている。
「変わりないことは変わりないけど今は30年の経験があるので。欧州でも10回乗った人は少ないのでは。チャンスはあると思うし、機は熟しすぎている。楽しみ。55歳にもなってワクワクできるのはありがたい」
そして今年はアイルランドのG1・2勝馬アルリファーで挑む。前走のベルリン大賞では5馬身差の圧勝。現地で5~6番手の評価を受ける。先週の9月24日にはJ・オブライエン厩舎まで足を運んで調教にまたがった。
「おとなしくて乗りやすそうな馬。体調も良さそう。いい感じ」
恩人の思いにも報いたい。前走から共同オーナーとなったキーファーズ松島正昭代表は「夢は武豊騎手で凱旋門賞を勝つこと」と公言。21年ブルームと22年ドウデュースに続き、直近4年間で3頭目の騎乗馬を確保してくれた。
「ドウデュースが今年の秋も国内と決まって、今年は乗るのは厳しいと思っていた。すごいオファーをもらってありがたい。松島オーナーの執念を感じる。応えたい気持ちが強い」
30年前の当時には「凱旋門がゴールなんですか?」と聞かれたこともあるという。今ではほぼ毎年テレビで生中継される。欧州頂上決戦に挑む意義や難しさを日本へ伝えてきたのは、他ならぬレジェンド自身だ。
「俺が言い続けてきたからね」
だからこそ、日本人初の勝利騎手は譲れない。

