王座奪還へ-。サウジC(G1、ダート1800メートル、22日=キングアブドゥルアジーズ)に挑む注目人物連載「世界へ挑む 侍ホースマン」(全3回)がスタートする。初回はフォーエバーヤング(牡4、矢作)を管理する矢作芳人調教師(63)と、同馬を担当する渋田康弘助手(62)の思いに迫る。2年前、厩舎の先輩パンサラッサが制した大舞台で、再びビッグタイトルを狙っている。

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勝ちに行くために。世界の“YAHAGI”は厩舎のエース、フォーエバーヤングを送り込む。2年前の2月25日にパンサラッサが世界一に輝いた舞台。再びのタイトル獲得へ、確かな手応えを感じている。

注目の4歳初戦。3歳末時点で国内G1級3勝、海外遠征でも【2 0 2 0】と崩れていない。父リアルスティールも矢作師が手がけて、16年ドバイターフでは厩舎初の海外G1タイトルをつかんだ。その血を受け継ぎ、異国でも実績を積み上げてきた。

「リアルスティールに似ているよ。いいところに筋肉がついてイメージ通りに成長してきた。イメージ通りにいかない馬が多いのだけれど。馬体もほぼ完成してきたね」

昨年はサウジ、UAE(ドバイ)、米国、米国と世界で4戦した。慣れない場所での調整、未経験の馬場やコースで結果を残す理由を、師は「絶対能力が高いから」と伝える。

「イレ込まない。ケンタッキーダービーの時は周りがどんちゃん騒ぎでイレ込んだけど、それ以外はない。あれだけ海外に行って成績を出しているから」

レースぶりにも文句はつかない。「どんな競馬もできる。最初はキックバックを嫌がっているところが見受けられたけど、それもかなり慣れてきた。レース前半に(前に)行けない部分がある中で、アメリカでもあれだけの競馬をしてくれた。先行力もゲートもだいぶよくなった」。課題を徐々に克服してきた。

昨年末の東京大賞典勝利後は、初めて在厩で調整した。「レース後の疲れを取る作業も初めてだけど、ヤングは優秀な馬だから理解してくれている」と話すのは担当の渋田助手だ。わずかな変化も見逃さぬよう丁寧にケアを重ねてきた。

明け4歳の成長期。充実ぶりに目を見張る。「タケノコみたいに伸びているし、体重もどんどん増えている。2歳の時はご飯を食べなかった」。前走時の馬体重は543キロ。2歳時から20キロ近く増え、恵まれた馬格がますますパワーアップしている。

今回は昨年2月サウジダービー以来、6戦ぶりにメンコを外してレースに挑む。縦列調教の効果で、キックバックを嫌がらなくなったからだ。同助手は「かっこいい顔を見てほしい」と笑みをこぼした。

鼻+鼻差の3着に敗れた昨年5月ケンタッキーダービーについて、矢作師は「完調ではなかったと俺は思う。それを完調にできなかったっていうところがちょっと悔しい」と振り返る。今回については「十分やれると思う」。見据えるのは頂点だけだ。【下村琴葉】

◆サウジC 20年創設。22年に国際G1となった。賞金総額2000万ドル(約31億円)、1着賞金1000万ドル(約15億5000万円)はともに世界最高額。23年に日本馬パンサラッサが逃げ切りVを飾っている。