ただ勝つだけでなく、誰と勝つか-。ダート世界最強馬フォーエバーヤング(牡5、矢作)が、BCクラシック(G1、ダート2000メートル、31日=キーンランド)で史上2頭目の連覇を目指す。

大一番を前にした矢作芳人調教師(65)に尋ねたのは、デビュー11年目・坂井瑠星騎手(29=矢作)の現在地。弟子に寄せる大きな期待を言葉に表した。【取材・構成=原田竣矢】

   ◇   ◇   ◇

国内G1&Jpn1計3勝、海外G1・4勝。昨年には日本調教馬初のBCクラシック制覇。偉業ずくめのフォーエバーヤングは、誰もが認めるスーパースターだ。その偉大な背中にいつもある名は「Ryusei Sakai」。師匠である矢作師は、特別な意味を持って、このタッグを送り出している。

「もちろんオーナーの理解が第一だけど、自分としても、自分が育てた弟子でこういう舞台に臨んで今まで勝ってきていることは、ものすごく誇らしいこと。外国人騎手に頼むことも、それはそれで一つの戦略だと思う。でも、それをせずに勝ってきたことに価値があると感じている」

ただ勝つだけでなく、師匠は誰と勝つかを大切にした。だからこそ“弟子の成長”という確かな財産が手の中に残っている。

「やっぱりあれだけの舞台は踏めないからね。あれだけの馬で。出るだけならできるかもしれないけど、常に人気を背負って勝ち負けを期待される馬で、ああいうレースに出ることは、なかなかできる経験ではない」

そして力強く「馬が人を育てるんです」。

海の向こうでは歓喜だけでなく、4度の敗戦も経験した。アウェイでの戦いは国内以上に想定外の連続。“日本代表”は何度も洗礼を受けた。その経験値こそが宝物。世界で戦う強い意志を持つトレーナーと、それに応える強靱(きょうじん)な馬のもとで、鞍上もまた強くなった。

夢が大きいからこそ、師匠の要求は高い。

「世界中の大レースを飛び回って乗るジョッキーになること。それは俺と瑠星のデビュー前からの共通の目標だから。そこにはまだ足りない。まだまだ成長途上だし、もっと上がっていかなければいけないと思う」

今や世界のホースマンの誰もが知る“世界のYAHAGI”。馬も人も育てるからこそ名トレーナーであり、フォーエバーヤングと坂井騎手が再び全米の頂点に立った時、その名がまた全世界にとどろく。(つづく)