芸術の秋に「芸術の道」ライドとシャレてみた。紅葉も楽しめるとさらに楽しいかなと、11月上旬に神奈川県の北西部に位置する旧藤野町を訪ねた。


「芸術の道」起点近くで黄金色に染まるいちょう
「芸術の道」起点近くで黄金色に染まるいちょう
「芸術の道」のコース
「芸術の道」のコース

甲州街道の宿場町で栄えた藤野町は07年3月に相模原市に編入され、10年4月からは同市緑区の一部となった。東と南は旧津久井町、西は山梨・上野原市、道志村、北は東京・八王子市、桧原村と接し、四方を山に囲まれた自然豊かな小さな里山の町だ。


同時に「芸術の町」としても有名。観光協会のHPによると、昭和の終わりから平成の初めにかけ当時の藤野町がまちづくりの一環として「ふるさと芸術村構想」をスタート。その中で名倉地区に30余りの野外環境アート作品が作られたという。「芸術の道」はこれらの作品が点在する1周約6・3kmのコース。ほかに「芸術の家」や「アートビレッジ」などもある。


中央高速の藤野パーキングエリアやその近辺から見える、山の中に突然現れる巨大な手紙に驚いた人もいるだろう。実はこれもその1つで「緑のラブレター」という、野外環境彫刻を代表する作品。決して筆者が感じたような「宇宙人が空から落とした手紙」などではなく「自然の素晴らしさや環境の大切さを表現する森と湖からのメッセージ」だそうだ。


「緑のラブレター」
「緑のラブレター」

「芸術の道」のスタート地点はJR藤野駅に隣接している観光案内所「ふじのね」。入口にあるのが「フジノゲート」。まさに芸術への門だ。


観光案内所「ふじのね」前にある「フジノゲート」
観光案内所「ふじのね」前にある「フジノゲート」

「ふじのね」で「芸術の道」のマップをゲットし、野沢菜のおやきを補給。秋晴れの最高のサイクリング日和の中を出発し、まずはルートから外れた、弁天橋のふもとにある「カナダ雁」を目指す。藤野駅が高台にあるので、相模川へ向かって一気に下り、力強く飛翔する様を目にした後は上り返して甲州街道へ復帰。少し戻って日連(ひづれ)入口交差点から再び豪快に下り、日連大橋で相模川を渡る。この橋のたもとの両端に石の意外な表情を表現しているとされる「記憶容量-水より、台地より」があるのだが、ダウンヒルでスピードが乗った橋の手前では止まるのは厳しいね。


「カナダ雁」
「カナダ雁」
「記憶容量-水より、台地より」
「記憶容量-水より、台地より」

相模川を渡るといったん上り、ピーク付近を右へ曲がるとまたしても豪快な下り。秋川橋で秋川を渡り、少し上った突き当たりに「芸術の道」の案内板がある。ここからぐるり1周に作品が展示されておりどちらから行ってもいいのだが、今回は右へと進路を取る。


少し上った後、名倉グラウンド方面への分岐近くにあるのが、今にも跳躍しそうな雄姿を見せているシカ科の動物「カリブー」。そして絶妙のバランスで構成された幾何学的作品の「あなたと…明日の空の色について」と続く。


「カリブー」
「カリブー」
「あなたと…明日の空の色について」
「あなたと…明日の空の色について」

その先を案内板に従って左折すると名倉峠へ向かっての上りとなる。まず現れるのが「雨」。これは分かりやすい。窓から眺めるが本来の意図のようだ。続いてステンレス板を組み合わせて作られた塔の「空を持つ柱」、「芽軸」と続く。「芽軸」は空から落ちてきて突き刺さったのかと思ったが、まったく逆で発芽の瞬間のすさまじいエネルギーを表現しているという。


「雨」
「雨」
「空を持つ柱」
「空を持つ柱」
「芽軸」
「芽軸」

標高300メートルほどの名倉峠を過ぎ、下り始めた付近にあるのが鉄と石を使って作成された「森の記念碑」、錆びて朽ち果て草木に覆われた「庵(いおり)」、巨大な昆虫のような「FLORA・FAUNA」。なんとなく分かるような気がするが…。


「森の記念碑」
「森の記念碑」
「庵(いおり)」
「庵(いおり)」
「FLORA・FAUNA」
「FLORA・FAUNA」

この近くには「山の目」のビューポイントがある。色づきを待つ山の中からこちらをじっと見つめる2つの瞳。案内板には「変貌する下界に無言のメッセージを送る」とあるが、88年(昭和63年)から30年以上見続けた目には何が映ったのだろうか。


「山の目」
「山の目」

「語り合う石たち」、「吠える」、「回帰する球体」はコースを外れ、葛原神社の細い脇道を直進した先にある。「回帰する球体」は案内板がなければスルーしそうな作品。どこからか流れてきてここに落ち着き、周囲の自然に馴染んだ巨大な種子だという。万物の叫びを表した「吠える」は神社裏手の開けたところに設置されていたが、同じ場所にあるはずの「語り合う石たち」は発見できず。ほかにいくつかどこにあるのか分からないものがあるが、これはこれで宝探しのようで楽しい。


葛原神社近くの「芸術の道」案内板
葛原神社近くの「芸術の道」案内板
「回帰する球体」
「回帰する球体」
「吠える」
「吠える」

葛原神社の先を道なりに左へカーブすると、あとは案内板があった分岐点までは気持ちのいい下り。その途中に自然のたくましさを語り伝える「森の守護神」、楕円球状パイプから1988年10月の天空を臨めば火星が見えるように設置されている「射影子午線」、細い鉄筋を幾重にも重ねて半透視の空間を作っている「限定と無限定」、天空を見つめる「COSMOS」と作品は続き、綺麗に色づいたいちょうの下にある「両側の丘の斜面」にぶつかると、「芸術の道」1周は終了する。


「限定と無限定」
「限定と無限定」
「COSMOS」
「COSMOS」
「両側の丘の斜面」
「両側の丘の斜面」

ここにある作品は全部で28。コース沿道にないものもあり、自転車に乗ったままではすべて見ることができないが、アップダウンが適度にある約6キロの「芸術の道」を、自然の中に作られたアートをのんびりと巡り、色づき始めた紅葉も楽しみながら走り抜けた。それにしても芸術は難解…。【石井政己】