熱海桜の次は河津桜だ。昨年はコロナ禍で中止となった桜祭りが今年は規模を縮小しながらも1年ぶりに開催された。ひと足早い「春満開」を求め、再び伊豆半島を目指した。
ただ問題は距離。神奈川県央の自宅からは河津までは片道130キロ。往復すれば260キロと長丁場だ。実は13年前にも行ったことがある。この時は午前5時半ごろに出発し、河津滞在1時間弱で折り返し、帰宅は午後8時前。グロスの走行時間は14時間超だった。当時は50歳でまだ元気があったが、それでもヘロヘロになった。還暦を過ぎた今、長距離耐久サイクリングイベントのブルベ以外でこの距離を走るのはやっぱり辛い(^_^; 帰りは輪行という手もあるが、実はちょっと苦手なんだよね。ならば伊豆でほかに走ってみたいところもあるし泊まっちゃうかと、1日150キロ前後で収まる1泊2日のツーリングを計画した。
出発は2月21日。前日は雨が降っていたが夜にはやみ、ツーリングする2日間とも晴れの予報。ただし、強い西風が吹くことになっていた。サイクリングは自然との戦いでもある。仕方ない。雨が降るよりましと思うとするか。
当日は午前4時ごろに起床し、自宅をまだ真っ暗な午前5時ごろに走り出した。吐く息も白く、気温は氷点下に近かった。
平塚で夜が明け始め、小田原で朝日が差してきた。気温も徐々に上がり暖かな日差しを浴びながら国道135号を進み、熱海の「お宮の松」には午前8時過ぎに到着。サンビーチ前の熱海桜はまだ綺麗に咲いていた。ここまではほぼ平たんで距離は約70キロ。
熱海を過ぎ、曽我浦大橋を渡って海沿いを南下し始めると、向かい風がきつくなってきた。この風にはこれからずっと悩まされることになる。
前回訪れた伊豆多賀からは平たんだが、網代の先から少し上ると海を眼下に見ながらしばらく走り、上り基調のトンネルを2つくぐった後は宇佐美へ向かって海抜0メートル付近まで一気に下る。ここからしばらくは平たんが続く。伊東付近ではヤシの木が目立ち始め、南国ムードが高まっていく気分のいい区間だ。「伊東に行くなら~」のCMでお馴染みのホテルもここにあり、そのフレーズを思わず口ずさんだりして♪
ここまでは国道135号をずっと走ってきたが、伊東の先からは県道109号(伊東川奈八幡野線)へ入る。過去にブルベで何度か走ったが、アップダウンはあるが伊豆高原まで車のいない快適な道が続くのだ。
この道に入ってすぐに「太平洋岸自転車道」という標識に気がついた。後で調べて見ると「千葉県銚子市から神奈川県、静岡県、愛知県、三重県、和歌山県の各太平洋岸を走り、和歌山市に至る延長1400キロの自転車道構想」(国交省プレスリリース)のことで、ルート上には神奈川県鎌倉市の七里ガ浜、千葉県旭市の九十九里浜やこの静岡県沼津市の伊豆など日本を代表する観光地・景勝地が多数存在し、自転車通行空間やサイクルステーションの整備、分岐部の案内看板などの設置などに取り組んでいるという。そういえば、このロゴマークは三浦半島を走っている時などに見たことがあった。
しばらく平たんで海沿いの気持ちいい道が続くが、川奈いるか浜からは川奈小学校のまわりをぐるりと回りながら激坂を上る。ここを通るたびに、ここの子供たちは足腰が自然と鍛えられるだろうなと思っていたが、昨年の3月で閉校となったようだ。
上りきると突き当たり。右へ行けば川奈駅方面だが、ここは左折。水森亜土のおもちゃ箱画廊、伊豆高原ステンドグラス美術館、川奈ホテルなどを左手にして上り基調のアップダウンが富戸付近まで続き、ピークを過ぎると富戸港へ一気に下る。最後は城ケ崎海岸から3キロほど上ると、伊豆ぐらんぱる公園から下ってくる国道135号と合流する城ケ崎入口交差点。分岐してから約15キロで伊豆高原に到着する。休日の国道は渋滞し信号も多いのでこちらはおすすめのコースなのだが、伊豆ぐらんぱる公園から伊豆高原への豪快なダウンヒルが楽しめないのが玉にきずかな。
国道に復帰するとほぼ海沿いを走ることになり、向かい風もまともに受ける。特に下りでは強風にあおられそうで怖いので、しっかりスローダウンしながらのダウンヒルとなった。
温泉街が続く伊豆高原からの先の道はそれと呼応するようにアップダウンも続いていく。いったん下り、浮山温泉、赤沢温泉の付近は平たんになり、北川温泉に向かって下り切ったあとは熱川温泉へ向かって上る。ピークを過ぎると片瀬、白田温泉まで下るが、またすぐに上りが始まる。この上りがこの区間では一番きつい。特にピーク手前の上り基調の長~い425メートルの友路トンネルは生きた心地がしなかった。尾灯2つに命を託し、後続の車がちゃんと避けてくれることを祈る。
自宅からペダルを回し続け、向かい風と戦いながら130キロ。稲取温泉の先の上りの途中でついに河津町に到着した。そして左手には満開の河津桜。サイコーじゃん(^o^)
ここまで来ればやっぱりお昼は金目鯛だよねぇ。河津町へ少し入ったところにあった「伊豆オレンヂセンター」の食事処で金目鯛の煮付け定食に舌鼓♪ ここまで走った甲斐があった味だった。
「伊豆オレンヂセンター」からは下り。今井浜温泉を過ぎるとすぐに河津浜。そして河津川沿いには河口の浜橋から4キロ先の峰大橋まで見事な桜並木が続いている。
訪れたこの日(2月21日)は満開のものもあるが、全体的に見ごろはもうちょっと先かなという感じ。でも春を思わせるには十分なピンクの光景が広がっていた。
桜祭りは2月28日で終了したが、河津町観光協会によると3月以降に見ごろが予想されるため、3月1日から6日までは駐車場(有料)確保や臨時トイレの設置、清掃、露店なども営業するとしている。
自転車を押しながらのんびりと花見していたのだが、最後にトラブルに見舞われた。河口橋から写真を撮影する際、欄干に立てかけていた自転車が突風にあおられてガッチャーンとコケた。その拍子でライトが外れ、取り付けに使用していたシリコンバンドが切れてしまった。ライト自体には異常がなかったが、取り付けることができないのでないのも同然だ。
長距離ライドの時はバックアップのライトを付けているのだが、今回はその場所にアクションカメラのGoProを取り付けていた。手元にあるのは申し訳程度の小さなライトだけ。夜でも明るい市街地なら走れるが、真っ暗な山の中は走れない。この時点でまだ午後2時前だが、これから先の行程を思うとのんびりしてはいられない。早々に花見は諦め、この日の宿がある湯ケ島へ向かって出発した。
ちなみに13年前にここに来たときも、到着した瞬間にパンクした。何かが起こる河津だねぇ…。(続く)【石井政己】