昨年に続き参加したオダックスランドヌール日本橋主催のミステリーブルベで自分のミスから転倒落車してしまった。左肩と背中を強打したものの、自転車と下半身は無事だったのでそのまま走り続けたが、痛みに耐えかねて結局リタイア。後日の診断で左鎖骨と肋骨の骨折が明らかになった。手術はせず保存療法の治療となり、ロングライドへの完全復帰は2カ月後となりそうだ。


行き先は非公開で、スマホやGPSなどは使用不可のミステリーブルベ。スタートおよび各PC(コントロールポイント)で次のPCへのキューシートを配付し、コースには隠しテーマもあるというゲーム感覚満載なところが昨年参加して気に入り(詳細はこちら)、11月12日に開催される今年も早々と参戦を決めていた。


ブルベとタイトルがあるが、距離は140〜160キロ。制限時間もキューシートを読み解く必要があるのでグロス時速12キロと通常より3キロ遅く、正式なものではなくブルベ練習会。時間に余裕があるので気が楽だ。


スタートは中央区入船の中央区立桜川公園。八丁堀駅からは徒歩0分。電車輪行で行こうかと思ったが、パッキングや乗り換えが面倒なので自宅から約40キロを自走。土曜日の夜明け前なので都内に入ると車もおらず快適だ。もちろん輪行袋はゴール地点が不明なので持って行く。


築地の我が日刊スポーツ新聞社前を通過し、午前7時過ぎに桜川公園到着。渡されたキューシートを見るとまずは柴又駅へ向かうとあった。点線で囲まれた準ミステリー地点には「八丁堀プラレールビル」「柴又駅」、太線に囲まれたミステリー地点には「東京駅、井上勝の像」「上野駅」とある。そうか。井上勝は日本の鉄道の父と称されており、どうやら今回は「鉄」がテーマのようだ。


東京駅、不忍池、上野駅を経由し、言問橋で隅田川、四ツ木橋で荒川を渡り、柴又駅到着は午前9時。信号の多い都内の上、多少迷ったり踏切も多かったので距離は18・1キロだが1時間半もかかってしまった。初めての訪問で、駅前の寅さんの像にまず感激。そして振り向くとさくらがいてびっくり。そしてこの配置が寅さんを見送るさくらとなっていることを知り、なるほどと感心した。


中央区築地の日刊スポーツ新聞社前
中央区築地の日刊スポーツ新聞社前
スタート地点の中央区立桜川公園
スタート地点の中央区立桜川公園
最初に渡されたキューシート
最初に渡されたキューシート
東京駅
東京駅
上野駅
上野駅
柴又駅前の寅さん像
柴又駅前の寅さん像
柴又駅前のさくら像
柴又駅前のさくら像
寅さんを見送るさくら
寅さんを見送るさくら

ここで渡されたキューシートによると、次の目的地となるチェックポイント2は小金井公園SL展示場。距離は50・4キロで都電荒川線と併走したり、JRの尾久車両基地、田端駅、新宿駅などを経由する。昨年に続く東京横断だ。ただ、ゴール地点はまだ不明。小金井公園でトータル68.5キロなので、まだ90キロほど走ることになる。西武線方面か、小田急線方面か。まさか三島の車両基地じゃないだろうな。


帝釈天の参道は歩いて通過。今来た道を折り返し、踏切を越えてからは京成本線と平行するように走り、遙かにスカイツリーを望みながら堀切橋で荒川を越え、さらに隅田川を千住汐入大橋で渡る。天気もいいし、順調そのもの。ランチはどこで食べようかなどとのんびり考えていた。


帝釈天参道
帝釈天参道
堀切橋からスカイツリーを望む
堀切橋からスカイツリーを望む

この後に悲劇は起きた。


交通量はほとんどない隅田川沿いの道で、走りながらキューシートとこの先の交差点名を確認しようとした時だ。気がつけば自転車が左へ斜行し、車道から外れて道路端の傾斜部分を走っていた。体重も大きく左へ傾いている。「やばい、このままじゃコケる」。そう思ったが、どうしていいか分からない。「何とか態勢を…」。しかし何も出来ないまま、ガッシャーン! アスファルトに体をたたきつけられ、一瞬、息が止まるような衝撃を受けた。


幸いにして周囲に車や自転車、歩行者はいなかった。負傷状況を確認すると、左肩と背中を強打し、左腕に擦り傷があったが、下半身に異常はなかった。ジャージーも破れておらず、これなら打撲で済むかと楽観的に考えた。自転車も左側から倒れたのでギアなどは無事。走行に異常はなさそうだ。


だが、主催者からの案内に「走行中のキューシートの確認には危険が伴います。詳細な内容の確認は停止時に行ってください」と赤字で注意があったにもかかわらず、その行為が元で落車してしまったことは猛省しなければならない。


もしかしたら、斜行してバランスが崩れた時、左足のクリートを外して足をつき、足と自転車をスライディング気味に滑らせながら止めれば擦り傷で済んだかとも思うが、何とも言えない。


ともかく「単なる打撲であってくれ」と祈りながらそのまま先へ進んだ。


痛みはどんどん増してくる。特に背中(左脇腹付近)が痛くて信号待ちのストップアンドゴーで乗り直すのが苦しい。ダンシングも痛くてできない。スピードも上がらない。小金井公園までは行けるだろうが、そこからあと90キロはしんどい。コースによってはDNFするか。


そんなことを思っている時にキューシートに出てきたのが「陸橋(三鷹跨線人道橋)を押して(担いで)渡る」という指示。三鷹車両センターを見せたいのは分かるが、今の自分にとっては「鬼」としか言いようがない。急な階段を鬼の形相で自転車を担いで上るには上ったが、ダメージはあまりにもきつかった。


三鷹跨線人道橋の急階段
三鷹跨線人道橋の急階段
三鷹跨線人道橋
三鷹跨線人道橋
三鷹跨線人道橋から見る三鷹車両センター
三鷹跨線人道橋から見る三鷹車両センター

約70キロ地点となる第2チェックポイントの小金井公園SL広場に着いたのは午後1時過ぎ。この時点でグロス平均時速は11・9キロで、ぎりぎりアウトのペースだった。


小金井公園SL広場
小金井公園SL広場

ここで鉄道員に扮したスタッフがトランペット演奏で出迎えてくれ、ブルベカードには改札鋏でパンチを入れるという懲りよう。あちこちに痛みがなければもっと楽しめたのだが……。


とりあえず次のキューシートをもらい行き先を確認すると「みなとみらい」となっていた。自宅へはいったん近づくが、その後はどんどん離れていく。とてもじゃないが走れそうもない。DNFを告げると、ゴールは東京タワー近くでお菓子が振る舞われることを教えてくれた。これも楽しみのひとつだった。残念。


肩が痛くて自転車が担げず、輪行は断念。コース上で自宅に一番近い若葉台付近で離脱し、鶴川街道から帰宅した。落車してから約85キロほど走ったことになる。


今回の隠しテーマは序盤からバレバレだったように「鉄道」で、イベント後に公開された「ネタばらし」でも「鉄道開業150年の節目に首都圏の“鉄道スポット”をくまなく訪ねる企画にしました。ぜひこれを機に“鉄道”を見直して頂き、ご利用、そして応援して頂ければ幸いです」とあった。コース設計者が「鉄」なのか非常に練られたもので、都電荒川線の三ノ輪橋駅からその線路沿いに走ったり、人道橋などを通って各電鉄会社の車両基地を巡るコースは「鉄」ではない自分にとっては興味深く楽しいものだった。最後まで走りたかったよ。


荒川区の東京メトロ日比谷線車両基地
荒川区の東京メトロ日比谷線車両基地
都電荒川線三ノ輪橋駅
都電荒川線三ノ輪橋駅
都電荒川線沿いを走る
都電荒川線沿いを走る
都電荒川線荒川車庫横にある都電おもいで広場
都電荒川線荒川車庫横にある都電おもいで広場
都電荒川線荒川車庫
都電荒川線荒川車庫
梶原踏切にある上中里さわやか橋から望む尾久車両基地
梶原踏切にある上中里さわやか橋から望む尾久車両基地
尾久車両センター
尾久車両センター
尾久車両基地
尾久車両基地
国立市光町にある鉄道総合技術研究所
国立市光町にある鉄道総合技術研究所
国立市光町の新幹線資料館前にある0系新幹線車両
国立市光町の新幹線資料館前にある0系新幹線車両
京王線若葉台車両基地
京王線若葉台車両基地
今回走ったコース
今回走ったコース

実は14年前にも落車で右の鎖骨を骨折した。この時も保存療法だったが、自転車にちゃんと乗れるまでには1カ月以上かかっており、ブルベに復帰できたのは骨折から64日目のことだった。今回は肋骨もあるし多少長引くか。まぁ、年内は治療に努め、年明けからぼちぼち乗り始めることになりそうですな。【石井政己】