「はぁはぁはぁ…」

E-Bikeは電動のアシストがあるとはいえ、上り坂を延々こぎ続けていると息は荒くなるし、汗も噴出してくる。これでも普通の自転車に比べれば楽なんだろうな~と考えたりするが、だからといってこいでるペダルが軽くなるわけでもない。ひたすら無心になってペダルをこぎ続ける。

前方に『神奈川県』の標識が現れる。「やった、明神峠か!?」と思ったが、その先も上り坂が続いている。えっ、どういうこと!? 道端に立つ小さな道標を見ると明神峠からここまで1.5キロ、先の三国峠まで1.5キロと記してある。えっ、ここが峠じゃないの? どうやら知らぬ間に明神峠を通り過ぎてたらしい。あははは… でも、峠らしきところあったかな? まあいいか。とりあえずここでひと休み、記念写真を撮っておく。

小休憩で再び走り始める。周辺は木で遮られ視界は良くないが、木々がないところでは遠く山並みを見渡すことができる。周りの紅葉も進んでいて山々がカラフルに色づいている。このまま走り去ってしまうのがもったいないくらいきれいな景色、時々足を止めては写真に収めた。

前方に大きな駐車場が見えてきた。おーっ、やった峠だ。駐車場の手前の斜面に小さな碑が立っていて『三国峠1168m』と書いてある。正真正銘、三国峠だ。駐車場にはハイカーのクルマがたくさん止まっていて、人もまばらの姿もあるが、この小さな碑は誰も見ていない。そんな碑だが僕にとっては特別の意味のあるものだった。


傾斜11度の坂道を上って行く
傾斜11度の坂道を上って行く

美しい紅葉を眺めながらペダルをこぐ
美しい紅葉を眺めながらペダルをこぐ

三国峠を記す小さな碑
三国峠を記す小さな碑

峠から山中湖まで下り坂。高原の風の中に飛ぶように走り抜けて行く。しばらく走ると左手にススキ野原が見えてきた。その向こうに山中湖と富士山の絶景が広がった! あれ?この景色見たことあるぞ。そのときはじめて、この道が車やバイクで何度か来たことのあるパノラマ台(展望所)へ続く道であることがわかった。「なるほどね、この道はあの道だったのか♬」ひとり笑いながらうなずいた。


パノラマ台へと続く道はまさにパノラマロード
パノラマ台へと続く道はまさにパノラマロード

あっという間に山中湖湖畔に到着。そろそろ昼メシの時間だ。昨日のホテルでもらったGoToキャンペーンの地域共通券が使えるレストランを探すがない。国道138号へ行けば店があると思い、旭日丘へ向かった。交差点の近くにいい雰囲気のアウトドア宿泊施設『PICA山中湖』を発見、レストランで共通券が使えるようなのでここでランチにする。

ウッディな建物があり、中庭にはテラスがあり自転車ラックが置かれていた。テラスのテーブルで食事ができるというので、迷わずテラス席に座る。メニューから山梨産信玄鶏を使ったランチを選んで注文。この旅でその土地を感じる食事を食べるのは初めてだ。今回は走るので精いっぱい、そこまでの余裕はなかったからなぁ~。信玄鶏を初めて食べたが、歯ごたえのある食感で、トマトベース豆ソースとの相性も良く、とてもおいしかった。


『PICA山中湖』で食べた信玄鶏を使ったランチ
『PICA山中湖』で食べた信玄鶏を使ったランチ

テーブルから見える場所に自転車ラックがあるのがうれしい
テーブルから見える場所に自転車ラックがあるのがうれしい

国道を引き返すのはつまらないので山中湖畔のそばを走れる道を探しながら進んでいく。パノラマ台からは富士山の山頂部も見えていたが、いまは雲に覆われ見えなくなっていた。

午後1時半。再び国道413号に戻り、道志方面へ向かう。国道の周辺はどこもかしこもグラウンドやテニスコートばかり。昔は大学のサークルや高校生の合宿などでにぎわっていたのだろう。時代は変わったいまは使われていないコートが多いようで、雑草が目立つようになっていた。


山中湖を見ながらE-Bikeを走らせる
山中湖を見ながらE-Bikeを走らせる

花を見つけペダルを止めた
花を見つけペダルを止めた

湖畔から山伏峠(トンネル)まで約4キロ。20分もかからずたどり着いた。ここが最後の峠越え、この先にもう大きな峠はない。短いトンネルを一気に走り抜けると、次の目的地『道の駅どうし』までなだらかな下り坂が続く、快適を絵にかいたようなご機嫌ロードだ。

到着した『道の駅どうし』は月曜日だというのにツーリングオートバイであふれ返ってた。オートバイは20台以上はいそうだが、自転車は1台もいない。日曜の海岸線や箱根周辺ではよく見かけたが、自転車を楽しむ人はまだ少数派のようだ。温かいはちみつレモンで栄養補給しながら体も休める。今の時間は14時20分、残りの距離は60キロ。帰宅は18時を過ぎそうだ。


道の駅どうしで栄養補給&休憩
道の駅どうしで栄養補給&休憩

道の駅にいた自転車は僕ひとりだった
道の駅にいた自転車は僕ひとりだった

その後も下り坂が多く、順調に距離を稼いで行った。ところが、家まで残り20キロを過ぎたあたりから、不安がよぎり始める。「大丈夫かなぁ…」「もしかしたらヤバいかも…」バッテリーの残量が9%、ついに1桁になってしまったのだ。

昨日は100キロ以上走ったのに残量が20%近くもあった、この調子なら今日も余裕だろうと思っていた。きっと最も消費の多いHIモードで走っていたのが原因だと思う。もちろん峠を2つ越えたこともあるだろう。とにかく最後までバッテリーを持たせなくてはならない。それからは坂の状況に合わせてモードと変速ギアをこまめに切り替え、できる限り電力消費を抑えるように努めた。

家までの行程でキツイ上り坂は3カ所。1つ目を残量6%で登り切り、最も長い2つ目の坂道を残量3%で上り切った。いいぞ、いいぞ、その調子。ラスト3つ目の手前で2%、坂を上り切ったところで、ついに1%になった。よし、行ける。それはまさに脚力とバッテリー残量の闘いだった(笑)

家に着く200メートルぐらい手前で0%になった。ついにバッテリーを使いきった。少ししてペダルが重くなるが、基本は自転車なので、こげばちゃんと前に進む。ついに家が見えてきた。2日ぶりなのに懐かしい。「ただいま!」玄関ドアを開けると妻が笑顔で迎えてくれた。幸せだ。サイクルコンピューターのメーターは僕の1日最長距離、114.7キロを示していた。【藤原かんいち】


バッテリー残量はついに1%になった
バッテリー残量はついに1%になった

自宅まで残り200メートルでバッテリー残量は0%に!!
自宅まで残り200メートルでバッテリー残量は0%に!!