沼津の海岸0mをスタート、富士山新五合目2400mを目指す富士山の旅。今回は後半戦。御殿場のコンビニで食料を買い込み、バックに詰め込むと再び五合目を目指した。少しすると民家はなくなり自衛隊の滝ケ原駐屯地が現れ、パッと視界が開ける。本来なら道の先に富士山がドーンと見えるはずだが、重い雲がかかっていて見えない。


果たしてバッテリー1本で富士山新五合目へ登れたのか!?
果たしてバッテリー1本で富士山新五合目へ登れたのか!?

その後もひたすら登り坂が続く。バッテリー残量は70%、余裕があるように思えるが、まだ20キロ以上登り坂が続くことや終盤は体力的にきつくなることを考えると、できる限りバッテリーを残しておきたい。本当は強いアシスト力が得られる「HIGH」や「STD」を使いたいところだが、いまは「ECO」モードで我慢我慢。

しばらくは道路沿いにフェンスが続いていたが、気が付くとフェンスはなくなり林に囲まれていた。時折、ドーン!ドーン!と大砲のような音が響き渡る。自衛隊が演習しているのだろう。玉が道に飛んでくるはずはないが、音が近いと緊張する。

同じような景色が延々と続く。変化がないのが辛い。林の中に柱が立っている。何だろう?と思い、脚を止めた。柱に「標高1016m・御殿場口登山道」の文字。その横には「馬返し」と書かれた案内板が立っていた。馬返しとは道が険しくなり、これ以上は馬では登れなくなったとされる場所らしい。「そんなところまで登ってきたのか」とうれしくなった。


標高1016mの「馬返し」まで来た
標高1016mの「馬返し」まで来た

もうひとつの「御殿場口新五合目」との分岐点
もうひとつの「御殿場口新五合目」との分岐点

11時半、標高1450mにある「水の塚駐車場」に到着した。目前に広がる大迫力の富士山が見られるフォトスポットなのだが今日は雲で見えない。公衆トイレや自動販売機はここが最後。売店もあるが残念ながら休業中だ。登り坂に備えて腹ごしらえをしておく。コンビニで買ったパンとおにぎりを缶コーヒーで流し込む。一休みしてもう1度富士山の方向を見ると、見えなかった富士山が顔を出している。やっぱり富士山は美しい。一気にテンションが上がった。


雲が切れて富士山が姿を現した。「水の塚駐車場」にて
雲が切れて富士山が姿を現した。「水の塚駐車場」にて

11時50分、「水の塚駐車場」を出発。これまでの走行距離は51.2キロ。バッテリー残量48%。ここから先、富士山新五合目までの「富士山スカイライン」はマイカー規制中だが自転車は通行可能。そのまま進んで行くと、旧料金所跡が現れた。係員が立っていて検温を受ける。もちろん平熱。新五合目までの距離を聞くと9キロだと教えてくれた。係員がE-Bikeに気が付き「それ電動自転車だね。5合目まで行ける!?」と聞かれたので「楽勝ですよ~!」とカラ元気で応えた。

バッテリー残量45%で9キロなら行けるはず、ここで初めて「STD」モードに切り替える。足へかかる負担がふっと軽くなる。比例してバッテリー残量の減りも早くなる。43%…42%…41%、見る見る減って行く。最後までもつか不安になってきた。そこで1キロで何%減るのか確認、計算をしてみる。「STD」モードだと、新5合目まで行けるか微妙な距離であることが判明した。再び「ECO」モードに戻し、勾配のキツイところは「STD」モードと、使い分けて登って行くことにした。

次第に霧が出てきた。標高1900m、バッテリー残量21%。駐車場にベンチを見つけたのでよたよたと座り込む。太ももはパンパン、両膝はガクガク。疲労困憊(こんぱい)だ。チョコレートでエネルギーを補給しておく。新5合目まで残り5.2キロ。「ECO」モード、最も軽いギアでゆっくり進んで行く。それでもきつくなるとペダルを止めて呼吸を整える。体力が回復したところで再び走りだす、この繰り返し。景色を見る余裕はない。まあ、霧でほとんど見えないんだけどね(笑)


霧が立ち込め幻想的な景色に変わった
霧が立ち込め幻想的な景色に変わった

七曲り駐車場のベンチで休憩
七曲り駐車場のベンチで休憩

3合目でついに標高2000mを越える
3合目でついに標高2000mを越える

標高2300m、4合目を越えると霧が晴れて青空が広がった、さらに山頂まで見えてきた。前方に5合目まであと1キロの標識が現れた! ゴールは目と鼻の先だ。バッテリー残量は4%。一度ペダルを止め、息を整え体力の回復を待つ。よしっ、ラストスパートだ。速度は遅いが、ひと踏み、ひと踏み、確実に前進している。バッテリー残量1%、前方に新五合目の駐車場が見えたきた。よし、あと少し。やった! ついに登り切ったぞ。

楽な道のりではなかっただけに、喜びはひとしおだった。道は完全に雲の上に出たようで、眼下には雲海がどこまでも広がっていた。すごい景色だ。この景色を見るために登ってきたのかもしれない、そんな気持ちなった。E-Bikeに乗っていなかったら、新五合目へ行こうと思うこともなかっただろう、まさにE-Bikeだからできた旅だった。

ご褒美に取っていたコロッケパンを食べながら、バッテリー1本で新五合目まで登れたことは自分的に快挙だった。だけど、もしバッテリーをもう1本を持っていたら、また違った旅になっていたはず。そんな変化、バリエーションを楽しめるのがE-Bikeの魅力、そんなことを考えた。


新五合目まであと1キロのところまで来た
新五合目まであと1キロのところまで来た

バッテリー残量1%でたどり着いた雲の上。ここは標高2400mの富士山新五合目
バッテリー残量1%でたどり着いた雲の上。ここは標高2400mの富士山新五合目

富士山の頂上が手を延ばせば届きそうな場所に見える
富士山の頂上が手を延ばせば届きそうな場所に見える

★地図