30日間で3700キロをE-Bike(YAMAHA WABASH-RT)で走り切り、佐多岬~宗谷岬の日本縦断を果たした、旅行家藤原かんいち。前例のないE-Bikeによるチャレンジ。運動不足の61歳の中年男にできるのか!? 一体どんな旅だったのか!? 激動の30日間を旅日記で振り返ります。


旧国鉄北陸本線の線路跡地を利用した『久比岐自転車道路』を行く
旧国鉄北陸本線の線路跡地を利用した『久比岐自転車道路』を行く

 Day18 2022/06/02

朝起きるとまずE-Bikeのバッテリーができているか確認をする。これを忘れたら大変なことになるので“宿に入ったらまず充電”がルーティーンになっている。ちなみに僕が乗っているヤマハのWABASH-RTは残量ゼロから満充電まで約3時間半、寝ている間に充電完了。また車体からバッテリーを取り外せるタイプなので、いつも部屋の中で充電している。

スマホとウオッチの充電状況も確認、魚津にあるネットカフェ『快活CLUB』を出た。ちなみに今回の滞在は午後7時55分~午前6時5分なので10時間10分。12時間パックと60歳以上割引が適用され2,493円だった。この料金でネットができて、ドリンク飲み放題、シャワーまで浴びられるのだから安い。

今日は日本海沿いで上越まで行き、そこから内陸へ向かう。明日『志賀草津道路・渋峠』を走りたいので、中野市辺りに宿泊できればと思っている。国道8号沿いのコンビニに入り、駐車場で朝メシを食べていると、ロードバイクに乗っているという地元の人が声をかけてくれた。これから向かうルートの話をすると、経験から新潟の親不知の周辺は道が狭いトンネルが連続、トラックも多いので要注意。事故に気を付けるよう、アドバイスをくれた。旅で一番怖いのは事故、背筋がピンと伸びた。

遠くに壮大な北アルプスの山々が見える田園風景をしばらく走ると、自転車の難敵『トンネル通行禁止』の標識が現れる。仕方なく迂回路へ行くと、気持ちのいい日本海が広がった。青い海と潮風を感じながら走れる、ご機嫌な道がしばらく続く。路肩に青いラインが引かれ『富山湾岸サイクリングコース』の標識が立っていいた。なるほど、サイクリングコースになっているのか。自転車専用道路ではないものの、海の景色が素晴らしく交通量も少ない、サイクリングにはピッタリの道だ。

ネットで調べてみると、富山県内には歴史と文化を感じる『田園サイクリングコース』。2つのコースを結ぶ『湾岸・田園サイクリングコース』など、総距離300km以上のサイクリングコースがあることがわかった。またサイクリングコースはバイクラックの設置、空気入れ・修理工具の貸出しなど、サイクリスト向けのサービスが受けられる道の駅などを 『サイクルステーション』。喫茶店やレストランを『サイクル・カフェ』として整備されているという。


今日の朝ごはんはコンビニで買ったサンドイッチと野菜ジュース
今日の朝ごはんはコンビニで買ったサンドイッチと野菜ジュース
国道8号。城山、横尾トンネルは自転車通行禁止のため迂回路へ
国道8号。城山、横尾トンネルは自転車通行禁止のため迂回路へ
トンネルが自転車通行禁止で迂回した道がなんと!『富山湾岸サイクリングコース』という幸運
トンネルが自転車通行禁止で迂回した道がなんと!『富山湾岸サイクリングコース』という幸運

新潟県に入ると、いよいよ親不知だ。北陸地方の海岸で最大の難所『親不知』。断崖絶壁と荒波の海岸、親子が互いを顧みる余裕もない、厳しい場所だったためその名が付いたといわれている。緊張感と共にペダルを踏むが…意外と交通量が少ない。時間帯がいいのか? それとも昨今のコロナの影響か? 理由はわからないが、とにかく車が少なく走りやすい。アップダウンがあるものの、アシストのあるE-Bikeなので、体力消耗を気にすることなく進むことができる。予想に反して、余裕綽々で親不知を通過した。


親不知の辺りは断崖絶壁なので道幅が狭くトンネルが多い
親不知の辺りは断崖絶壁なので道幅が狭くトンネルが多い
道の駅親不知ピアパークのシンボルは青銅製の巨大な海亀像『ミリオン』
道の駅親不知ピアパークのシンボルは青銅製の巨大な海亀像『ミリオン』

国道8号線、糸魚川の市内を抜けると、再び気持ちのいい海岸線になった。しばらく走ると『久比岐自転車道路』の文字を発見。坂を上ると美しいサイクリングロードが延びていた。『久比岐自転車道路』は糸魚川市中宿と上越市虫生岩戸を結ぶ全長32kmの自転車(&歩行者)専用道路。旧国鉄北陸本線の線路跡地を利用した道で、走っていると鉄道時代に使われていた趣のあるレンガ造りのトンネルが次々に現れる。安全に走れる上、トンネルの違いを眺めながら走れるのが楽しい。まるで遊園地のアトラクションのようだ。

『久比岐自転車道路』を満喫すると直江津から内陸へ向かった。時刻はすでに4時半。遅くなっていいので『志賀草津道路・渋峠』の入口、中野市まで何とか行きたい。それからはわき目もふらず、ペダルをこいだ。妙高新井から国道292号へ入ると田舎道になり、しばらくすると日が暮れた。


『久比岐自転車道路』を走っているときに見つけた能生白山神社。本殿は国指定需要文化財
『久比岐自転車道路』を走っているときに見つけた能生白山神社。本殿は国指定需要文化財
SLが走っていたトンネルを時代を超えてE-Bikeで走ることになるとは…
SLが走っていたトンネルを時代を超えてE-Bikeで走ることになるとは…
車の通らず安全に走れるサイクリングロードが全国にできてほしい
車の通らず安全に走れるサイクリングロードが全国にできてほしい
海の幸が豊富な日本海。『道の駅うみてらす名立』で食べた海鮮丼はおいしかった
海の幸が豊富な日本海。『道の駅うみてらす名立』で食べた海鮮丼はおいしかった

外灯のない真っ暗な道を小さなヘッドライトの明かりだけで進んでゆく。峠に向かっているのか上り坂が続く、ハアハア息を切らしながらペダルをこいでいると、後ろから来たスクーターが僕の横に並んだ。何だ? と思い、顔を見ると見覚えがある。おおっ、兵庫の友人ヨッシーじゃないか。どうしてこんなところに…?

話を聞くとSNSで僕の行動をチェック。この道を走っているんじゃないかと見当をつけてきたという。スクーターは荷物満載、今日からしばらくツーリングをする予定で家を出てきたらしい。それにしても兵庫から日本海経由でここまで600kmも走ったというから驚く。

ヨッシーとはSNSでやり取りしているが、実際に会うのは8年ぶりになる。久しぶりだし、せっかくなので明日、一緒に渋峠へ登ろうということになる。明朝の再会を約束すると、ヨッシーは暗闇の中へ消えていった。ひとりになり、ふと我に返った。まさか、幻想じゃないよな こんな遠くの山奥で友人に会うなんてことある? キツネにつままれた気分。明日、ヨッシーは本当に現れるのか?


■日付:2022年06月02日

■走行距離:173.1km

■ここまでの総走行距離:21,628km

■ルート