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シェアサイクル10年目

 ミラノの大気汚染と市内の渋滞解消を狙ったシェアサイクル「BikeMi」(バイクミー)が10年目を迎えた。

 「年間30ユーロ(サービス開始当初)払えば30分以内の利用ならお金はかからない。ミラノ市は30分も走れば目的地に行ける程度の広さだし、時間が来てもそこで乗りかえればいい。出かけた先で雨に降られたら、ステーションに置いて地下鉄やトラムで帰ればいいし、そもそも自転車泥棒が多いから所有するよりも気楽。つねに整備されている状態だしね」(利用者である友人談)

 大気汚染、渋滞解消などという政治的な理念では人は動かない。自分の生活にどれだけ直接的なメリットがあるか。まさにミラノのシェアサイクルは市民の要求にマッチした。

1万6000人超の利用者

 今では電動アシスト付自転車も1000台導入されて、合計4650台。毎日1万6000人を超える利用者がいるという。市内のステーションも昨年280カ所までになった。

 しかし、♪いいことばかりはありゃしないーと歌ったのは今は亡き忌野清志郎だけど、光あるところに影がある。

 サービス開始10年を迎えて問題も増えてきた。

 ひとつは、自転車の破壊と盗難。先週末、ミラノの地下鉄モリノドリーノ駅で、17歳の学生4人によって、駅施設の破壊とシェアサイクルの電動部品盗難があった。小さい記事ではあるけれど、類似のニュースは頻繁に目にする。徐々に丁寧に扱われなくなってきているのはたしかだ。ただでさえミラノの公共物は落書きにあったり、破壊されることが多いだけに、その標的がシェアサイクルに向けられても不思議はないけど。

カーシェアリングでも

 一方、5年ほど前からサービスが始まり今や6社が市場を争うミラノのカーシェアリングも問題を抱えている。

 そのひとつが駐車場問題。個人で所有することに比べればカーシェアリングは税金や保険などの維持費はかからないものの、自家用車であろうとカーシェアリングであろうと同じ公道を走る条件は同じ。ミラノ市交通社が運営する「GuidaMi」(グイーダミ)はいくつかの自前の駐車場を所有していて、そこに駐車するのは無料。しかし、ただでさえ空き駐車スペース探しがたいへんな市内中心部では無力だ。

 利用者のマナーも大きな問題。多いのは、引っ越しに使おうとした傷、バイクを運んだ傷、トランクを広げた時の傷…。

大小便、嘔吐の跡などなど

 また、あるカーシェアリング会社では、コンパーチブルの屋根の隙間から女性のハイヒールを発見したとか、中には車内に女性の下着や使用済みコンドームが残されていたという苦情も寄せられたという。

 そうなると、「車の中に財布を忘れた」「スマホを残して降りてしまった」「買ったばかりのケーキを車内に置いてきた」なんてのは可愛いもの。おしっこをもらしたとか、排便したあとがあったり、はては嘔吐物が…。いや、文字とはいえこれ以上は書くまい(すでに書いてます…)。

 また、若年層や運転経験が未熟なドライバーには保険料金が高いように、カーシェアリングも一定の年齢に達していないと利用はできないが、実際には運転しているところまではチェックできないため、資格を持っている知人に言うなれば偽りの権利を取得してもらい、事故を起こして不正が発覚するというケースも後を絶たない。

日本人のマナーの良さに期待

 日本でもシェアサイクルやカーシェアリングは普及しつつあると聞く。同様の問題が起きうる可能性はあると思う。まぁ、対人口比の交通事故者数はイタリアの半分ほどだから、それを考えれば(運転マナーから推察するに)ここまではひどくないだろうと期待はするけど…。(イタリア・ミラノ在住・新津隆夫。写真も)