いよいよ2020年東京オリンピック・パラリンピックまで1年を切りましたが、「ホストタウン」という言葉を聞いたことがありますか?世界各国からたくさんの選手や関係者、観光客が来日するオリンピック(五輪)は単なるスポーツの祭典だけでなく、地域の活性化や観光振興、文化交流の場でもあります。ホストタウンとは、大会参加国・地域との文化的、人的、経済的な相互交流を図る地方公共団体を国が登録する制度で、日本全国から442の自治体が現在登録をしています。

LAで行われた「復興ありがとうホストタウン」のイベントに出席した関係者たち
LAで行われた「復興ありがとうホストタウン」のイベントに出席した関係者たち

大会に参加する選手や関係者との交流だけでなく、大会参加国からゲストを招いて地元の人たちと文化的交流を図るなど様々な相互交流を通じて、日本の良さを世界にアピールするというものです。中でも東京五輪開催が決まった時、「東北の復興が遅れてしまうのでは」と多くの被災者が不安を抱いたと伝えられる岩手、宮城、福島の東北3県の被災地は、支援してくれた国や地域の人たちに復興した姿を見せて感謝を伝えると共に住民との交流を行う「復興ありがとうホストタウン」の対象になっており、23の自治体が登録を済ませています。

そのうちアメリカと交流を図ることが決まっている岩手県花巻市、大船渡市、福島県喜多方市、南相馬市の4市の関係者がこのほど渡米し、ロサンゼル(LA)でこれまでの交流や街の魅力を紹介するイベントが行われました。ハリウッドのジャパン・ハウスで行われたイベントには、花巻市の上田東一市長やエンゼルスの大谷翔平選手の後輩となる花巻東高校3年生の野球部員、大船渡市の消防団員千葉善博さんらが出席し、各自治体の取り組みや被災地の魅力などを紹介し、「ぜひ被災地にも足を運んで」と東北をアピールしました。

岩手を代表する米と牛肉も紹介されました
岩手を代表する米と牛肉も紹介されました

大谷選手とシアトル・マリナーズの菊池雄星投手を輩出している花巻市は、アメリカ出身の元楽天ゴールデンイーグルの投手ダレル・ラズナー氏による野球教室を開催している他、震災以降たくさんの支援を受けてきた姉妹都市アーカンソー州ホット・スプリングスとの様々な交流を紹介。また、神輿の数で世界一となってギネス登録もされた400年以上の歴史がある花巻祭りや温泉など街の魅力もアピールしました。

大船渡市から参加した千葉氏は、震災直後に救助に駆け付けたロサンゼルス郡消防隊員との交流を紹介し、今後も救助訓練を通じた相互交流を続けていきたいとコメント。本部から救助の指揮を取っていたデリック・チャップマン消防隊長とも再会し、「ぜひ復興した大船渡の姿を見て欲しい」と大船渡での再会を約束し合っていました。大船渡市では来年、捜索救助活動に参加した隊員らを招いて市民との交流事業を行うと共に米国代表の陸上選手や関係者が大会終了後に同市を訪問して交流することなども計画されています。

喜多方市は今夏に東京で行われた世界ボートジュニア大会に出場した選手や関係者らを招いて70年の歴史を持つ県営荻野漕艇場でボート競技を行っている地元の中高校生と交流事業を行ったことを報告。選手たちは喜多方市の伝統工芸や太鼓などにも挑戦するなど文化体験も行い、来年も更なる交流の機会を持つ予定だと言います。

「おいしい」と参加者に評判だった岩手の米で作ったおにぎりと岩手牛を使った料理の試食も行われました
「おいしい」と参加者に評判だった岩手の米で作ったおにぎりと岩手牛を使った料理の試食も行われました

また、福島市は野球とソフトボールの競技会場にも決まっていることから、「米どころで、きれいな水で美味しいお酒もたくさん造っている喜多方にもぜひ立ち寄って欲しい」とアピールしていました。

イベント後半は、出席者たちに岩手の米や岩手牛、花巻や喜多方、南相馬の地酒などが振る舞われ、東北の美味しい食に参加者たちは舌鼓を打っていました。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)