新型コロナウイルス感染拡大の影響で自宅待機命令が続くロサンゼルス(LA)は20日現在、カリフォルニア州内のおよそ半数を占める最多3万9600人を超える感染者がおり、経済活動再開には長い道のりが想定されています。ニューサム知事は先日、カリフォルニア州内の医療体制の確保や新たな入院患者数の減少などを指標に6月初旬にも経済活動の再開を加速させ、現在の第2フェーズからよりリスクの高いビジネスの再開や無観客によるプロスポーツの試合の開催なども認める方針を示しました。しかし、LAでは今後も当面は不要不急の外出自粛を求める方針で、経済活動再開の目標を独立記念日の7月4日に定めることを発表しました。LAの自宅待機命令はすでに60日を超えていますが、この2カ月で人々の日常や行動、考え方にも大きな変化が出ています。

▼マスク着用が文化に?!

3月中旬まではほとんどマスクをしている人がいなかったLAですが、今では外出時はマスク着用が義務化され、マスク文化が定着しつつあります。

路上でマスクを売る人が増えています
路上でマスクを売る人が増えています

当初は買い物やレストランのテイクアウト時のみマスク着用が求められていましたが、今ではビーチでも遊泳やサーフィン中以外は常に砂浜でもマスクを着用することが求められ、ジョギングする人もマスクやバンダナで顔の半分を覆っています。

▼行動の自由の制限

これまでは当たり前だった好きな時に好きな場所に行き、好きな時に好きな物を買い、会いたい人に会いたい時に会うといった行動の自由はコロナで全て奪われました。

新型コロナとの闘いへの支援を求める看板も
新型コロナとの闘いへの支援を求める看板も

ビーチに行っても散歩や遊泳、サーフィンは認められているものの、砂浜に敷いたビーチタオルの上でリラックスすることはできず、友人ら大人数でくつろぐことも禁じられています。同居する家族以外と集うことができず、教会にも行けず、ヘアサロンにも行けず、これまでのように旅行に出かけるなど移動の自由も制限され、不要不急の外出を禁止する行動の制限は続いています。

▼買い物は楽しむものから必要な物を買うためのものに

スーパーマーケットやドラッグストアで商品棚をゆっくりと見て回り、買い物を楽しむ行為はもはや過去のもので、一方通行になった店内の通路を他人との距離を保ちながら必要な物をできるだけ短時間で買うのが新たな常識になっています。

入場制限が行われ、「具合が悪い人は家に帰って下さい」との看板も設置されているファーマーズマーケット
入場制限が行われ、「具合が悪い人は家に帰って下さい」との看板も設置されているファーマーズマーケット

ファーマーズマーケットに行っても、これまでのように野菜や果物を手にとって鮮度を自分の目で確かめて買う自由は奪われ、ロープ越しに店員に欲しい物を伝えて袋に入れてもらうスタイルがニューノーマルになっています。今月に入って小売店の再開も始まりましたが、事前にオーダーした商品を店頭で受け取ることができるだけで、店内で商品を見て買い物する自由もありません。

▼車の中で食事する人が急増

レストランやカフェなど飲食店は閉鎖され、テイクアウトとデリバリー、ドライブスルーのみ営業が認められるようになって2カ月が過ぎましたが、自炊する人が増えた一方で、お気に入りのレストランを支援するためテイクアウトを利用する人も少なくありません。

LAのショッピングモールの再開は7月4日になる見込み
LAのショッピングモールの再開は7月4日になる見込み

しかし、テイクアウトでは自宅に戻るまでに料理が冷めてしまうため、そのまま車内で食事するスタイルが若者を中心に広がっています。外で集うことができないため、友人や恋人と路上に駐車した車の中で食事を楽しむ非日常が、ニューノーマルになりつつあるようです。

▼テレワークの加速で都会から引っ越し

経済活動を一部緩和しているLAですが、テレワークが可能な事業は引き続きテレワークを続けるよう求められています。IT企業など自宅勤務でも仕事に支障がない企業の中には、今後も当面はテレワークを継続することを決めたり、希望する従業員はテレワークを続けることを認めるところも出てきたことで、生活費の高いLAから引っ越す人が増えています。

路上にテントを張って暮らす人が急増するLA
路上にテントを張って暮らす人が急増するLA

出勤する必要がなくなり、どこからでも仕事ができるようになれば家賃の高いLAにとどまるメリットはないと判断したミレニアル世代を中心とする人たちが、郊外や田舎へと引っ越しを始めており、市内には「空き室」の看板が目立つようになりました。

▼ホームレスが急増

全米の中でもリビングコストが高く、特に家賃の高騰が社会問題になっているLAでは、失業や仕事が減ったことで家賃を支払えない問題が深刻化しています。カリフォルニア州では家賃や住宅ローンの支払いを90日間延期し、強制退去を禁じる条例を発令していますが、自宅を手放したり、より家賃の安いアパートに引っ越しする人が増えています。

ホームレス人口が増え続けるダウンタウン
ホームレス人口が増え続けるダウンタウン

ホームレスの数も急増しており、パンデミック下のLAだけで6万人ものホームレスがいると言われています。LAのガルセッティ市長は感染拡大を防ぐためにホテルを借り上げ収容する対策を行っていますが、日ごとに増え続けるホームレス全員を隔離することは不可能で、ダウンタウンのスキッドロウと呼ばれる低所得者が路上暮らしする一帯は路上にテントがびっしりと並びスラム街と化しています。また、これまでホームレスがいなかった地域や高架下などでもテントを張って暮らす人が増えており、近隣住民からは衛生面を懸念する声があがるなど社会問題になっています。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)