新型コロナウイルス感染症の発生が確認されてから1年が過ぎましたが、未曽有のパンデミックは人々の食生活にも大きな変化をもたらしています。感染拡大によるロックダウンで飲食店がテイクアウトとデリバリーサービスのみになったことなどから自炊率が大幅にアップし、以前よりもヘルシーフードへの関心も高まっています。コロナ対策として免疫力を高めるといわれる発酵食品やヨーグルトなど体に良い影響を及ぼす微生物プロバイオティクスを含む食品やビタミンDを多く含むきのこ類やマグロ、サーモンなど魚介類などを積極的に食事に取り入れ、宅配サービスを利用して新鮮なオーガニック食材を定期購買する人が増えた一方、先が見通せないストレスから不健康なスナック菓子やジャンクフードを求める人も逆に増えているといわれています。

コロナ禍でハンバーガーはコンフォート・フードとして人気
コロナ禍でハンバーガーはコンフォート・フードとして人気

パンデミックが始まって以降、「コンフォート・フード」という言葉をよく耳にするようになりましたが、コンフォート(快適、安心)な食べ物、つまり「食べると幸せな気分になれる」「食べるとほっとする」フードを今、多くの人が求めています。人それぞれコンフォートに感じる食べ物は違うと思いますが、アメリカでは一般的にスナック菓子やアイスクリーム、クッキーやケーキなど甘いもの、ジャンクフード、手軽にレンチンで食べられる冷凍食品などがコンフォート・フードに分類されます。ここロサンゼルス(LA)でも昨年3月にロックダウンが始まった当初は、地元で人気のハンバーガーチェーン店やクリスピー・クリーム・ドーナツのドライブスルーに大行列ができ、なんとハンバーガーやドーナツを買うのに2時間待ちという異常事態も起きており、いかにストレスから多くの人がジャンクフードを求めていたかがよく分かります。

コロナ禍でコンフォート・フードを代表するファストフードの売り上げが急増していると伝えられていますが、このほどブランド調査会社MBLMが、コロナ禍において親しみを感じるファストフード店のランキングを発表しました。

マクドナルドはコロナ禍でも24時間ドライブスルーが利用できるのが若者に人気の秘訣
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スターバックスはドリンクのみならずサンドイッチやサラダなど軽食も1日中提供して人気
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全米の消費者およそ3000人を対象に行った調査によると、多くの消費者がパンデミック以降、ファストフードを「コンフォート」の源にしていることが分かったといいます。約100のブランドを対象にした今回の調査で1位に輝いたのは、ジョージア州発のチキン専門ファストフードチェーン「チックフィレ」でした。そして2位はマクドナルド、3位はスターバックス、4位はケンタッキーフライドチキン、5位はダンキンという結果になっています。ちなみに昨夏に発表されたランキングではスターバックスが1位でチックフィレは2位、マクドナルドが3位で上位2つが入れ替わり、ケンタッキーが7位から4位に浮上した以外は特に大きな顔ぶれの変化はありませんでした。

マクドナルドは朝食メニューも充実で朝から夜まで気軽に利用できる利点も
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チックフィレはピーナツ油でカラッと揚げたサクサクの衣とジューシーな胸肉が特徴のフライドチキンを甘いブリオッシュパンに挟んだチキンサンドが人気で、シンプルながら鶏肉のうま味を味わえるとファンが多くいます。ちなみに2年ほど前にSNSでどちらのチキンサンドがよりおいしいかバトルを繰り広げて「チキン戦争」と話題になった同じく南部発のチキン専門ファストフード「ポパイズ・ルイジアナ・キッチン」は今回発表されたトップ10には入っておらず、チックフィレの人気の高さはコロナ禍でも健在のようです。

シンプルながらジューシーなチックフィレのチキンサンドは不動の人気
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トップ10に名を連ねているのはいずれも大手チェーンで、誰もが知っているブランドに対する安心感と手ごろな価格設定というのもひとつのキーワードになっているようです。また、コロナによって多くの人が非接触を求めており、ドライブスルーやアプリの利用で極力人と接することなく購入できるかどうかも消費者にとっては重要な要素のひとつのようです。

ワクチン接種は始まっているものの依然として収束の兆しが見えないアメリカでは、コンフォート・フードを求める傾向はまだしばらく続きそうです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)