新型コロナウイルスの感染拡大から1年半。すでに多くの人にとってコロナと共存しながらコロナ渦前の日常を取り戻すことが当たり前になりつつあります。先日、コロナ渦になって初めて、州をまたいだ飛行機移動をしてそれを強く感じました。それと同時に、筆者が暮らす西海岸とマスク着用やワクチンに反対の姿勢を強める南部とのコロナ対策に対する姿勢の違いも実体験し、改めてコロナで顕著になったアメリカの分断も垣間見た数日でした。感染予防対策を徹底しているロサンゼルス(LA)から、最近まで医療崩壊の危機に近い状態にあったフロリダ州まで飛行機で移動した体験をレポートしたいと思います。

飛行場や機内でのマスク着用は義務化。違反すると罰金刑などになる可能性もあります
飛行場や機内でのマスク着用は義務化。違反すると罰金刑などになる可能性もあります

コロナ渦が始まる直前の昨年2月上旬に飛行機に乗って以降、この1年7カ月は州をまたいでの移動は避けてきました。3月中旬にロックダウンになって以降、半年近く日課の散歩と食料品などの買い出し以外はほぼ引きこもり状態の生活が続き、秋から年明けにかけての感染爆発も経験したこともあり、なかなか飛行機に乗る勇気が持てなかったというのが正直なところかもしれません。また、車社会のLAの人間にとっては、長距離運転はあまり苦ではないため、近場でレクリエーションを楽しめることも理由の一つかもしれません。

フェニックス空港の人混み。平日の午前中でこんなにたくさんの人が
フェニックス空港の人混み。平日の午前中でこんなにたくさんの人が

この時期のアメリカは夏休みが終わって新学期が始まった直後ということもあり、本来なら旅行業界にとってはオフシーズンで、多くの企業もまだリモートワークを継続しているため、平日のフライトはそこまで混雑していないはず。そう思っていたのは、完全な間違いでした。筆者が今回利用したのは、世界トップ10に入る旅客数を誇るロサンゼルス空港ではなく、南部オレンジ郡のジョン・ウェン空港。国内60都市と中南米に就航する小規模な空港のため、フライト数が少ないこともありLAの空港に比べて比較的空いていて利用しやすいことで知られています。月曜日の早朝出発だったにも関わらず、空港内の道路はプチ渋滞するほど混雑しており、セキュリティーチェックにも長蛇の列ができていてびっくりしました。むしろ、コロナ渦前より人が増えているのではないか?そんな率直な感想を持ったくらいです。

航空会社も反マスクの乗客対応に追われ、搭乗口ゲート前にもマスク着用を促す看板が
航空会社も反マスクの乗客対応に追われ、搭乗口ゲート前にもマスク着用を促す看板が

今回、オーランドまではフェニックス経由でしたが、LAからフェニックス、そこからオーランドまで、共に機内は満席。感染拡大が始まった当初からしばらく実施されていた機内のソーシャルディスタンスも完全撤廃され、マスク着用が義務化されている以外は特に感染対策も行われていません。コロナ前と変わったことと言えば、アルコール類の提供が一時中断されていることと、搭乗時にアルコールシートが配布されて手すりやモニター、机など自分の座席周りの消毒を行わなければならないということくらいでした。一方、チェックインに関しては人との接触を極力減らすため、事前にオンラインでチェックインし、発行された搭乗券をスマホに保存してQRコードを搭乗時にスキャンするというスタイルがスタンダードになっていました。セルフで搭乗手続きができる機械もロビーに設置はされてはいますが、使っている人はかなり少ないように見受けられました。

マスク着用に関しては、飛行場内全てと機内での着用はバイデン政権によって義務化されています。従わないとアメリカ運輸保安庁(TSA)のマスク着用義務に違反したとして、500ドルの罰金が科せられます。アメリカでは、このところ機内でのマスク着用を拒否して暴れる人が後を絶たず、社会問題にもなっていることもあり、繰り返し違反した場合は1000ドルから最大3000ドルの罰金を科すことも発表されており、厳しい罰則があります。それでもマスク着用を拒否した挙句暴れたり、客室乗務員に暴行を加えるなどして逮捕される乗客も急増していることから、機内では何度も連邦政府の要請によってマスク着用が義務化されているとのアナウンスがありました。鼻出しマスクは厳禁で、鼻と口元両方を覆うようにといった注意もされます。マスクは飲食時を除いて常に着用することが求められ、筆者が搭乗したフライトでは誰もがこのルールにきちんと従っていました。

世の中はすでに昨年11月末の感謝祭からクリスマスにかけての連休を利用して多くの人が飛行機を利用して旅行を楽しんでいることが伝えられ、「リベンジトラベル」と言う言葉も頻繁に耳にしてきました。周囲でも仕事やプライベートですでに何人もの知り合いが飛行機を利用しており、コロナ渦前と変わらない日常生活を人々が取り戻していることはメディアを通じても見聞きしていましたが、今回パンデミック以降初めてとなる飛行機移動で感じたことは、想像以上にコロナ渦前と変わらぬ光景がそこにあることでした。

LA南部オレンジ郡の空港のセキュリティーチェックも早朝ながら長蛇の列が
LA南部オレンジ郡の空港のセキュリティーチェックも早朝ながら長蛇の列が
パンデミック前のハイシーズンと変わらぬ人混み
パンデミック前のハイシーズンと変わらぬ人混み

ワクチンの接種が進んだことで多くの人が我慢してきた旅行に再び出かけるようになったこと、海外旅行に行けないため国内旅行の需要が高まっていることなどもありますが、航空会社や飛行場で働く人の人材不足で飛行機の本数そのものが減っていることも理由に挙げられています。コロナ渦で解雇された職員の多くが復職しておらず、人手不足は航空業界でも深刻だと言われています。また、職員へのワクチン接種義務化を巡っても様々な問題が出ており、ユナイテッド航空では国内で働く職員のおよそ600人が接種を拒否したため解雇されたことが明らかになっています。需要と供給のバランスが正常化していないことも混雑の要因になっていますが、アメリカはあと1ヶ月半もすれば再び多くの人が飛行機を利用する感謝祭休暇の季節がやってきます。その後は、クリスマス、新年と旅行シーズンが始まりますが、新たな変異種の出現で再び感染爆発が起こる可能性も否定はできないことから今のうちに旅行に出かけたいと思う人も案外多いのかもしれません。

日本を含め、世界中で今後はウイルスが存在することを前提に、感染対策と日常生活を両立していくことを考える時期に来ていると改めて感じ、治療薬が開発されればおそらく完全にコロナは過去のものになるのだろうとも想像した数日でした。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)