オレゴン州立大学の研究チームが、大麻に含まれる2つの化学物質が新型コロナウイルスの感染予防に効果があるとの論文をこのほど発表して話題になっています。その成分とは、カンナビゲロール酸(CBGA)とカンナビジオール酸(CBDA)で、ウイルスの侵入を阻止する可能性があるとジャーナル・オブ・ナチュラル・プロダクトに掲載されたことが米大手メディアで報じられ、人気トーク番組のネタにもなっています。報道によると、コロナウイルスのアルファ株とベータ株を用いた研究で、この2つの化学物質はウイルスのスパイクタンパク質と結合し、ヒト細胞への感染能力を阻害する効果が見られたといいます。CBSのスティーヴン・コルベアが司会する番組やABCテレビのトーク番組ジミー・キンメル・ライブ!でも取り上げられ、「大麻でコロナ予防ができるかも」とSNSでも話題になっています。しかし、専門家はこの研究結果は大麻化合物が実際に感染を予防したり、治療効果があると証明されたことにはならないとしており、動物実験や臨床試験などを行って実証することが必要だと警告しています。また、オミクロン株への効果は分かっていないといいます。

ちなみに、大麻草などに含まれる成分の1つでリラックス効果などがあるとして人気のCBD(カンナビジオール)や抗生物質としての機能があるとされるCBG(カンナビゲロール)など健康食品やオイル、クリームなどとして販売されている製品や吸引するとハイになる成分として知られるTHC(テトラヒドロカンナビノール)には、予防効果はないそうです。今後も研究は続けるそうですが、実用化されるまでにはまだまだ長い年月がかかりそうです。

大麻がコロナ感染予防に効く? と報じる記事
大麻がコロナ感染予防に効く? と報じる記事

日本では大麻取締法によって所持・譲渡・譲受・栽培などが禁止されている大麻ですが、アメリカでは大多数の州で医療目的での使用が認められており、現在ではここカリフォルニアを含む多くの州で嗜好用大麻も合法化されています。医療用大麻は、がんやうつ病、片頭痛、てんかんなど様々な病気や症状の治療に用いられています。カリフォルニアでは、昨年3月に新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンが行われた際にも、大麻販売店は生活に欠かせない「エッセンシャル・ビジネス」として認められ、スーパーマーケットやドラッグストアと同様に通常営業が行われていたほどです。それだけでも日本では考えらないことですが、コロナ禍においてカナビス(connabis)と呼ばれる大麻取扱店の前には長蛇の列ができ、賑わっていたことも大きな驚きでした。

ウエストハリウッドには大麻が楽しめるカフェも
ウエストハリウッドには大麻が楽しめるカフェも

カリフォルニア州では、1996年に医療用大麻が全米で初めて合法化され、2016年に行われた住民投票で21歳以上の使用が認められ、18年から嗜好用大麻の販売が開始されました。これにより、運転免許証やパスポートなど有効な身分証明書を持つ21歳以上の成人なら医師による処方箋がなくても購入することが可能となり、合法的に使用、所持、また栽培することもできます。ただし、販売できるのはカリフォルニア州大麻管理局から認可を受けた小売店のみ(医療用大麻は許可を受けた医薬小売店からも購入が可能)で、公共の場での使用、吸引は認められていません。また、飲酒と同様に使用下での運転も禁止されており、罰則対象となっています。一方、カリフォルニア州では合法の大麻ですが、連邦法では所持や使用は禁止されているため、州内にある国立公園や空港など連邦政府が所有する敷地内での使用や所持は禁止されており、州外への持ち出しもできません。もちろん日本では禁止薬物で米国外への持ち出しもできませんし、コロナの治療薬として承認されているわけではないので、日本からの滞在者は手を出さないよう注意が必要です。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)