12月になると街のあちらこちらにクリスマスツリーがお目見えし、ショッピングモールなどではサンタクロースが登場して子どもたちと記念撮影ができたり、クリスマスカードを送ったり、プレゼント交換したりと、クリスマスムードが高まります。

クリスマスはアメリカの一大イベントの一つで、みんなが祝うものというイメージがあるかもしれませんが、実は誰もが祝うわけではありません。日本ではイベント的な位置づけのクリスマスですが、こちらでは宗教的な色合いが濃く、様々な文化的・宗教的背景を持った人々が暮らす多民族国家アメリカでは、「キリストの降誕」を祝うクリスマスはキリスト教徒のお祝いとされています。

スーパーマーケットではハヌカを祝う風船も売られています
スーパーマーケットではハヌカを祝う風船も売られています

そのため、「メリークリスマス」とは言わず、「ハッピーホリデー」という言葉を使うのが一般的です。クリスマスと新年を同時に祝う意味があるほか、異なる宗教の人に対して不快な思いをさせないためのものでもあります。

キリスト教徒ではない人たちの中にも家族で集まって食事をしたり、プレゼント交換するなどホリデーの過ごし方としてクリスマスを取り入れる家庭もありますが、クリスマスをまったく祝わないという人も多くいます。

クリスマス以外で有名な12月の宗教的行事に、「ハヌカ」と呼ばれるユダヤ教のお祝いがあります。ユダヤ系が多いことで知られるロサンゼルス(LA)では、ハヌカもクリスマスと並んで毎年各地で盛大に祝われています。

ビバリーヒルズの公園に飾られたハヌカを祝う燭台。日が暮れると毎日、1本づつ光が灯されていきます
ビバリーヒルズの公園に飾られたハヌカを祝う燭台。日が暮れると毎日、1本づつ光が灯されていきます

両方とも12月のお祝いですが、起源も性格も異なります。ハヌカはヘブライ語で「ささげる」という意味の動詞に由来し、8日間にわたってお祝いする年中行事の一つです。クリスマスとほぼ同時期に祝われますが、ヘブライのカレンダーに沿っているため毎年開始日は異なり、今年は12月7日から15日になっています。2000年以上前にシリア王国から奪回したエルサレム神殿を清め、ユダヤ教の信仰の場を取り戻したことを記念するハヌカは、残されていたわずかな油で8日間ろうそくの火が燃え続けた奇跡をお祝いすることになったのが始まりとされています。

9つの枝があるハヌッキーヤーは、この季節になるとLAの街でも多く見かけます
9つの枝があるハヌッキーヤーは、この季節になるとLAの街でも多く見かけます

そのため「光の祭り」とも呼ばれ、ハヌッキーヤーという9本枝の燭台に毎日火を灯してお祝いします。初日は真ん中の種火用と、1本目のろうそくの計2本に火を灯し、翌日からは1本ずつ点火するのが決まりです。最終日となる8日目にはすべてのろうそくに火が灯り、終了となります。LAでは、市庁舎前広場やビバリーヒルズの公園、サンタモニカのショッピングストリート「プロムナード」などでハヌキアの点灯が行われています。

スティーブン・スピルバーグ監督の自伝的映画「フェイブルマンズ」(2022年)の中でも幼い頃に家族でハヌカを祝うシーンが登場しますが、ツリーの代わりに自宅にハヌッキーヤーを飾り、家族や友人と共に毎晩火を灯し、歌を歌ったりするのが習わしです。そして、「ラトケス」と呼ばれるジャガイモのパンケーキやジャムが入った「スフガニア」という砂糖がかかった丸い穴なしドーナツを食べてお祝いします。

ドラッグストアにも「ハヌカ」専用コーナーが登場し、ハヌカを象徴する青と白のグッズが並びます
ドラッグストアにも「ハヌカ」専用コーナーが登場し、ハヌカを象徴する青と白のグッズが並びます

しかし、今年はイスラエルとパレスチナ自治区を実効支配するハマスとの紛争の影響で、一部のユダヤ人はハヌカのお祝いを大々的に行うことを躊躇していると伝えられています。世界的に反ユダヤ主義が強まる中、自宅の窓際をハヌカの光で飾ることで憎悪犯罪や批判にさらされることを懸念する声があるようです。実際に数年前にニューヨークでハヌカを祝っていたユダヤ教徒が切りつけられる事件も起きており、テロも警戒される中でLAのユダヤ系コミュニティーにも不安が広がっています。

自宅前の庭にハヌカを祝うデコレーションをする家庭も
自宅前の庭にハヌカを祝うデコレーションをする家庭も

家族の安全のため今年はお祝いをしない家庭も出ているほか、30年続けたハヌカの装飾をやめた小売店もあると地元メディアは伝えています。「今年のハヌカは例年とは違う」と話す人もおり、アメリカのホリデーシーズンにもイスラエルとハマスの衝突が暗い影を落としています。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)