午後4時3分東京発の「ひかり」に乗った。「ひかり」に乗るのは浜松で下車するためである。日の暮れが早くなったせいもあるが、夕刻の新幹線はどこか淋しい。ひと仕事終えて、地元にと散って行く人たち。疲れた体をシートに沈めビールで癒やしている人もいた。
◇ ◇
午後5時27分。浜松着。こちらは、今から餃子を食べようと決めていた。浜名湖の取材。翌朝からの取材のため前泊、そして餃子…。
餃子は、恐らくどの街で食べてもおいしい食べ物なのかもしれないが、それでも「名物はその地で!」。それが、おいしいのである。
取材仲間と浜松の居酒屋「たんと」で集合する。餃子50個盛りと、日本酒「出世城」を注文し、あとは豪快に餃子をパクついた。ちなみに50個盛りは2900円。
うまいねぇ~。 浜松餃子の特徴はキャベツが中心で後味がさっぱり。また、ゆでたモヤシが円形に盛られた餃子の中心にこんもり乗っていること。シャキとした歯ごたえが、口の中でいいアクセントになる。
「食べ過ぎには注意」と思いながらも、さてどのくらい食べただろうか?。
翌朝。
残念ながら雨模様。
今回は浜名湖と湖畔、水陸両方を楽しもうという旅企画である。が、湖はあいにくの雨で楽しめそうにない。
舘山寺温泉、霧雨に白く煙る浮見堂の桟橋から観光船に乗り込んだ。
途中、大型のパーティー船で一休みをはさみ、向かったのは対岸のヤマハマリーナである。リニューアルされたばかりでピカピカ。その前に大きな白いヨットが何艇も並んでいた。太陽がいっぱいなら恐らく陽光にキラキラとまぶしい光景なのだろう。
その奥で昼飯を食べ、今度は鉄道、人気の天浜線に乗り込んだ。
浜名湖の北側を、ほぼ湖にそって走る鉄道。1両編成でいかにも「ローカル線」というたたずまいが人気なのかもしれない。
「あぁマリメッコだ」。乗車した途端に地元の客が声を出す。マリメッコ? 聞けばフィンランドのブランド名。日本でも若い女性に人気が高いカラフルで大柄なデザインが特徴とか。そのマリメッコ柄が車内のカーテンやシートなどに統一して使用され「かわいい!」と歓声が上がる。
ちん・ちん・ちん…。そんな感じで天浜線は行く。
途中、地元のビール「三ケ日クラフト」が、「サービスです」と振舞われた。
グイッとやる。
オレンジの香りが微かに口中に広がった。車内でやる一杯は、どうしてこんなに染みるのか。
ゆっくりと、のんびりと走る天浜線、年を感じる昨今にはいいペースである。下車したのは気賀(きが)という駅。
井伊直虎が眠る井伊家の菩提寺の龍潭寺や、「気賀の関所」が再現されている。地元ガイドさんに案内されて「入鉄砲に出女」「姫街道」…。歴史を学ぶ散策も楽しんだ。
さて、夕刻である。
朝からの雨も上がり、カラッとした空気が気持ちいい。湖面を赤く染め始めた夕陽を見ながら、また船で舘山寺へと戻る。この夕景に「浜名湖は冬がいい」という人も多い。
「うなぎでも食べて帰ろうか?」。そんな誘いが聞こえてきた。遠州フグに、カキ、カニ…。浜名湖の「美食の冬」も始まったばかりである。