磯釣りの「石物」のシーズンがやってきた。千葉県鴨川市太海「新海荘」では、「第27回全日本磯釣連盟東日本支部各会選抜イシダイ大会」に39人が参加した。腕に覚えのある達人たちをもってしても本命のイシダイは上げられなかったが、38センチのイシガキダイが上がるなど、有望ポイントであることを証明した。潮温も徐々に下がり始め、20度前後になれば大物イシダイとのファイトは楽しめる。

イシダイは、野球でいえばホームランか三振か。究極の磯釣りでもある。一発大物を狙って、ベテラン磯釣り師が束になってかかっていっても、なかなかお目にはかかれない。中には、「なかなか口説くことができない高根の花の女性を口説くようなもの」とおっしゃる釣り人もいたが、まさによく似ている。そんなお宝をゲットしようと、サムライ、棚、旅ノ台、平島、蛸表など、抽選で引き当てた有望ポイントで、サオを出した。

38センチ(1・35キロ)のイシガキダイを釣って大会を制した岩竹光さん(68=千葉県栄町)は、旅ノ台で午前11時ごろに食わせた。それまで沖に向けてエサのヤドカリを30メートルほど投げていた。「小型のイシガキがじゃまして、ヤドカリがそっくり取られた」という。エサをサザエに変えて「エサ持ち」を良くするとともに、ポイントを沖目から足元(水深約6メートル)にした。

ちょうど干潮で、最も潮が引いた「ソコリ」のタイミング。石物歴45年の経験から、「潮止まりには食い気のある大物が掛かってくる」と読んだ通りになった。発想の転換が功を奏した。

潮が動かなくなるとあきらめる人も多いかもしれない。「エサ取りが少なくなって、チャンスと思うこと。潮時を逃さないことが必要です」(岩竹さん)。今年3月3日には46・5センチを筆頭に43・5センチ、38センチのメジナを小島で掛けたつわものが、「必釣法」を伝授してくれた。

36センチ(1・2キロ)のイシガキを確保した及川淳一さん(65=千葉市中央区)は、旅ノ台の水深12~13メートルの足元をずっと狙い続けた。こちらは10時ごろの下げ潮時に食った。続けて30センチのイシガキを連釣。次いでイシダイの大物らしきアタリがあり、サオ先がグイグイと引き込まれたが、根ズレでバラしてしまった。「太海は足元で楽しめる場所が多いのが魅力」と話す。イシダイ歴40年で58センチが最高。「年齢と同じ以上のサイズが釣れたら引退しますよ」と笑う。

「新海荘」の林新治店主(74)は、「潮が例年よりも遅れ気味。低気圧が何個か通過して潮温が下がれば、イシダイの好機になる」と見込んでいる。最盛期になれば、60センチ(4~5キロ)級も上がる一級磯でもある。12月中旬まで豪快な引きを味わうチャンスはありそうだ。【赤塚辰浩】

◆イシダイ 日本各地に分布する。黒と白のシマ模様が鮮やかな魚体がトレードマーク。成長するとシマ模様が消えて、クチバシ部分が黒くなるため、「クチグロ」と呼ばれる。水深50メートルまでの岩礁地帯におり、鳥のクチバシに似た強力な歯で、硬い殻や甲を持った動物を好んで食べる。

◆イシガキダイ イシダイよりも潮温がやや高めの海域を好む南方系の魚種。幼魚は「石垣」に似た模様が魚体に出る。成長したオスはこれが消えてクチバシ部分が白くなるため、「クチジロ」と呼ばれる。習性はイシダイと似ている。

▼釣り宿 太海「新海荘」【電話】04・7092・1535。集合午前5時。渡船4500円。

※危険防止のため、必ず磯ブーツをはき、ライフジャケットを着用すること