静岡・手石「米丸」(肥田定佳船長=57)で、コマセマダイ釣りを取材した。例年通り4月中旬に始まったノッコミは3キロ台が続出、5月中旬の取材前日も続いていた。今季最大は4月25日の6・7キロ。果たして大ダイは姿を現してくれるのだろうか? 陽気な船長を慕い集まった常連客を乗せた船は青野川の河口を出港し、石廊崎沖を目指した。

前回の乗船で数&型好調、2・7キロも上げた大橋政徳さん(73)は出船前、コマセマダイで釣果がない記者に「仕掛けがなじみ、刺し餌がコマセと同調するまでに1分30秒ぐらいかかる。それまでは誘いを入れたりはしない方がいい」とアドバイスしてくれた。

午前5時すぎに出船。ジオサイトでもある石廊崎周辺の雄大な景色を眺められる航程も、楽しみのひとつだ。

ポイントに到着し、規定時刻の午前6時に開始。だが、「サバがいるから」と肥田船長の素早い判断で次のポイントへ移動。到着直後に左舷ミヨシ(最前部)の森内誠二さん(50)のサオが曲がった。「12メートルストレートの仕掛けで指示ダナからサオ1本分(約2~3メートル)を上げゆっくりと戻し誘ったら、食ってきた」と良型を手に話した。

船中2匹目は右舷大ドモ(最後部)の米山渉さん(60)。「指示ダナでずーっと待っていた。誘いも何も掛けず、波の揺れで誘っている感じで5分くらい待っていた。投入直後も2回しかサオを振らず、パラパラとしかコマセをまいていない」という。

午前8時ごろ、胴の間の坂井正樹さん(26)が3・6キロを釣り上げた。マダイ釣りは2回目、釣り自体も4回目。「うれしいけど、よく分かっていない。引っ張られたから釣れたのかと思い、同じ職場の森内さんに『掛かったっぽいんですけど、どうすればいいんですか?』と聞いちゃいました」。やりとりの仕方を教えてもらいながらの1匹となった。紙面用の写真をお願いすると「どうやって持てばいいんですか?」と、ぎこちない手つきながらも笑みを浮かべた。その後も同サイズ含め4匹を追加した。一方、森内さんは4匹目を釣ると「餌が付いていれば釣れますよ」と達観した様子。納竿までに3キロ台2匹含め計9匹で、断トツのサオ頭となった。

午前9時すぎに良型を上げた宮川博さん(73)は「潮がたるんで、少しいいかなと思っていたら来た」と、チャンスをしっかりつかんだ。

午前11時前に3・2キロの4匹目を上げた米山さんは「左舷が釣れているので向こうに潮が行っていると思い、6メートル+6メートルのテーパー仕掛けのハリ側を8メートルに替え6メートル+8メートルにし、餌がゆっくりと落ちるようにハリの近くにフロートを付けました」という。その後にも1匹追加した。

取材当日は、最大3・6キロ、船中24匹で3キロ台が5匹上がり、ノッコミ中らしい1日となった。

南伊豆各所では毎年、7月後半から8月頭に稚魚の放流を行っている。石廊崎周辺だけでも5万~6万匹だ。「漁師を始める(18歳)より前からだから詳しくは分からないけど、もう何十年も続けている」と肥田船長。5センチ程度で放流された魚は大きく育つと、鼻の穴がつながっているという。南伊豆では放流した魚がどれくらい交ざっているかの調査もしている。大ダイを楽しめるのも、そんな長年の成果だ。

この日の状況を肥田船長は「反応はずーっと出ていた。サバがいなければ良かったんだけど」と振り返った。6月中旬までは大型が釣れそうだ。中旬以降はイサキとのリレーになる予定。6月後半からはスルメイカも開始する。大ダイを狙うなら今だ。【渡辺久美子】

■「釣りあるある」で5年越しリベンジ成功

4年前の同時期に米丸に乗船。初めてコマセマダイに挑んだ記者だが、周りは釣れているのに2日続けてのボウズ。長いハリスの扱いもうまくできず、リベンジを誓った。だが、その後の社会情勢もあり4年ぶりの乗船となった。その間2度ほど挑戦したが、顔をみることはできなかった。「やはりここは、米丸の船長のもとで釣らなくては!」。肥田船長に相談しての今回の取材となった。

写真を撮ったり、話を聞いていたりしていると「いいから早く釣れよ」とプレッシャーをかけてくる肥田船長だったが、「反対側で釣れたよ」と教えてくれる。様子を見に行こうとサオから目を離した直後、隣の米山さんから「食ってるよ」の声。当たった瞬間を見られなかったのは残念だが、殺気が消えて食ってきたことにしよう。何か別のことをしているときに食ってくるのは、釣りあるあるだ。

周りのお客さんにリールを巻くタイミングや速さをアドバイスしてもらいながらのやりとりで上がったのは1・3キロ。肥田船長からは「もっとデカイの釣れよ」と言われたが、それはまた次回。とりあえず、5年越しのリベンジは果たせた。

▼手石「米丸」【電話】0558・65・1060。集合午前4時30分。餌&コマセ&氷付き1万4500円。定員8人。※詳細は電話でご確認ください。