夏の風物詩、シイラ釣りイベント「テッパツ・ドルフィン・フェスティバル」(日刊スポーツ新聞社後援)が11日、東京湾口等を舞台に行われた。同イベントは、コロナの影響から4年ぶりの開催となったが、今回が記念すべき20回目。総勢62人が「共栄丸」「宝生丸」「村井丸」「若鈴丸」の4隻に分乗し、1匹の最長(叉長)で競い合った。ゲストには“おかまり”こと岡田万里奈も参戦した。

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夜も明け切らぬ富浦新港に、続々と参加者が集結。その中にはおかまりもいた。「えっ、今日はゲストなんですか? 普通に参加して優勝するつもりで来ましたけど…」と手には参加費を握り締めていた。「何年前かは覚えていませんが、このイベントで初めてシイラを釣りました」。今年の誕生日にはプライベートで共栄丸に乗船し、110センチ超を釣り上げたが、この日は村井丸(村井智博船長)に乗船した。

富浦沖に4隻が並んで待機。午前6時の汽笛を合図にそれぞれのポイントへと向かったが、この汽笛はコロナで自粛を余儀なくされた3年間に終止符を打つ合図にもなった。

村井丸はシイラが好みそうな潮目を探すこと約40分。ミヨシに立った釣り人が小型のシイラ、いわゆる“ペンペン”の群れを発見。「いた、いた! 後ろにいったぞ!」。シイラ釣りは船全体のチームワークが重要だ。ミヨシの人が魚を見つけたら船全体で情報を共有し、時には自らが魚を寄せて、自分の釣果を犠牲にしても船としての釣果につなげる。そんなチーム戦を体験できるのも、シイラ釣りの魅力の1つだ。

ファーストヒットは青木佳子さんの58センチだったが、このサイズが続々と掛かった。その後、青木さんは63センチでサイズアップ。「シイラは2年ぶりなので、取りあえず取れてよかったです。入れたらモゾモゾとして追って来ました。ちゃんとフッキングできていなかったので向こう合わせでしたが、乗ってくれました」。

今回がシイラ初挑戦の遠藤仁さんも63センチをゲット。「船でのルアーは初めて。普段はサーフからのヒラメがメインですが、追ってきて食うところが見えるのが楽しい!」と興奮気味。

村井丸のムードメーカーとなった増田哲郎さんは「俺は釣りよりも、海で酒を飲めればいいから!」と豪語。その言葉通り、缶ビールを片手にシイラを見つけると「そっちに行ったぞ!」と叫び続けた。仲間から「いいからお前も釣れ!」と叱咤(しった)されると、わずか一投でヒット! 「はい、終わり。後は飲むよ」と言いつつも、時にはミヨシで群れを探し、時にはタモ入れもこなしと、まさにムードメーカーを買って出た。

おかまりは、増田さんの「あれ? 岡田さんはまだ釣れていないの? 釣れるまでミヨシ固定ね」といじられつつの釣りとなった。朝イチの群れで早々にヒットしていたが、「計測するほどではないので…」と写真撮影のみでリリース。その後も「キタっ…けど小さいなぁ」となった。

この日、村井丸はペンペンの群れには遭遇するがメーター超には遭遇できなかった。そんな終了5分前。おかまりが待望のヒット。周囲からは「さすが、持ってるね~!」と期待がかかったが、痛恨のバラシ。「背ビレが見えてからのバイトでドラグも出て、シイラ釣りとしては最高の掛かり方だったけど、フッキングができなかった」と悔しさをにじませた。周囲の「どれくらいの大きさか見えた?」には「これくらい」と両手を広げ「120センチはあった…」と苦笑した。

正午でストップフィッシング。集計の結果、共栄丸乗船で109センチ(全長132センチ)を上げた磯部裕さんが記念すべき20回目の優勝を手にした。「正直バイトの瞬間は見えなかったけど、思いのほか大きくてビックリしました。大会も初めての参加で優勝はビギナーズラックです。共栄丸常連の鈴木さんが寄せてくれたおかげで取れました。鈴木さんありがとうございます!」と仲間への感謝を口にした。なお、全計測の中で1メートル超はこの1匹のみだった。また、船長賞は共栄丸の笹子宏宣船長、チーム賞は共栄丸が受賞した。

初回から唯一参加している秋本和義さんは、その理由を「楽しい大会だから」とし、「来年も開催されれば参加します」と胸を張った。

流麗なボディーラインで海面を割るバイト。さらに、同乗した皆が仲間になれる。シイラ釣りはまだまだ楽しめる。【川田和博】

2位の村山博紀さん「共栄丸に乗船していましたが、鈴木さんが寄せてくれたのを私が掛けただけなので…。鈴木さんのおかげです。ありがとうございました」

3位の和田俊也さん「(計測員として乗船した)山口さんと(競技委員長の)市川さんに教えていただき取ることができました。ありがとうございます」

女性最大のレディース賞獲得の関まゆみさん「船酔いをしてしまうのでこれまで参加できませんでしたが、(皆勤賞の)秋本さんに勧められて、薬を飲んで初めての参加で賞をいただけてうれしいです」

■大会と概要

「テッパツ」は房州弁で「大きい」の意味で、シイラは英語で「ドルフィンフィッシュ」。つまり“大きいシイラ”が大会名となり、最も大きなシイラを釣った人が優勝となる大会だ。その計測方法は下顎(あご)から尾ビレの谷までの叉長(さちょう)で、使用ルアーはトップウオーターのみ、針はカエシのないバーブレス限定。さらに、リリースのみが検量対象で、不可の場合は対象外。つまり、可能な限り魚への優しさも配慮した大会として開催されている。

同大会の競技委員長・市川正章さんの総評 「台風の影響でいつもより短い時間でしたが、ギリギリ開催することができました。ここ最近は小ぶりなシイラが多くなっていて、大会前日にも様子を確認しましたが、昨日ほど姿が見えず、群れも少なめでした。潮目も決して良いといえる状況ではなく、不思議なことにフラつきもいませんでした。条件的には決して良くなかったと思いますが、小トビ(小さいトビウオ)がサインになったと思います」