千葉・いすみ市の大原港は1日、ヒラメの部分解禁を迎え、「力漁丸」(中井聡船長=62)でヒラメ釣りを楽しむ釣り人を取材した。同港のヒラメ釣りはゴールデンウイーク明けの5月上旬から禁漁となり、約4カ月ぶりに再開。この日は最大3・1キロが上がり、今後の盛り上がりを予感させた。
まだ周囲が真っ暗な午前3時半。次々と釣り人が集まった。午前4時半ころの出船だったが、部分解禁のエリアまでは約1時間の道のりとなった。午前5時半ころ、中井船長の合図で一斉に餌の活きイワシを投入。その直後、左舷大ドモの阿部正一さん(73)のサオが大きくしなった。「来た」と笑みを浮かべるが、巻き上げる途中でフッと軽くなった。「いきなりのヒットでちょっと慌ててしまった。残念です。また頑張ります」。
船中1匹目は、右舷胴の間の勝亦史人さん(38)。「リリースサイズなので恥ずかしい」と照れた。30センチ以下は資源保護の観点からリリースだが、スケールに乗せると35センチ。とりあえずキープした。「アタリがあってから結構待った。多分30秒ぐらい。コツコツから、ググッときたので合わせた」。釣り歴は3年ほどだが、「自分でサオを買って本格的に始めたのは今年の2月なので、解禁は今年初めて。とりあえず、釣れて良かったです」。その後、1・6キロに加え、うれしいゲストのマハタも釣り上げた。
この日の最大は指揮者であり今年6月に「かすり傷」で歌手デビューした岡宏(81)の3・1キロ。開始早々にソゲ(小型のヒラメ)を上げ、その後ゲストのマハタ2匹を追加。さらに、ソゲと1キロ超を釣り上げると、「まあ、こんなものかな」と話した。だが、ラスト15分にドラマが待っていた。
「コンコン」とサオ先が揺れる。「触っているな。食い込めよ…」。2回目のアタリでフッキングをすると、サオが大きく弧を描いた。「船頭が良くて、道具が良くて、腕が良ければ釣れるんです」と笑った。「こうじゃないと芸能人は務まらないですよね」と豪語しつつも、実際に上げると「バレなくて良かった…」と胸をなで下ろした。
今年の大原港ヒラメ部分解禁のキロオーバーは計4匹。中井船長は「潮が全く流れず、状況としては昨年ほど良くはなかった」。全面解禁の10月1日までは「新しいポイントはまだあるのでそこを攻めます」。また、今年の全面解禁は「例年であればイワシは沖を回遊しているけど、多分今年は港前にいます。そうだとすれば、近場で楽しめるはずです」とアピールした。【川田和博】
■中井船長の餌付け推奨方法
中井船長は「ヒラメ釣りの8割は餌付けで決まる」という。中井船長が推奨する餌付けを紹介する。
<1>親針は上顎から目と目の間の間を通し、針先が必ず頭の方を向くように通す。ヒラメは尾の方から食ってくるため。
<2>孫針は腹掛け推奨。ヒラメは下からイワシを狙うため。トリプルフックの場合は、尻尾近くに1本刺し、2本が必ず頭の方を向くようにする。シングルフックは肛門付近から針先を出し、これも必ず頭方向を向くようにする。針の軸は腹に隠す。
「ヒラメ40」という格言がある。これは“前アタリから本アタリまで40秒待て”という意味だが、中井船長と岡はともに「餌の付け方で、早合わせしてもバレない」という。実際に岡はこの付け方で3・1キロを上げた。
■中井船長のアドバイス「必ずフッキング」
この日、釣果が伸びなかった理由の1つに“バラシ多発”があった。中井船長は「巻き合わせや聞き合わせは絶対にダメ。必ずフッキングをしてください」。前アタリのモゾモゾからヒラメとのやりとりが始まるが、「どこかで意を決したフッキングが必要。どこでするのか? それを決めるのがヒラメ釣りの醍醐味(だいごみ)」という。また、「途中でバレてもそのまま上げず、すぐに落とし直してください。食い直すこともありますので」と話した。
■「底を切る」大切:記者コラム
「ヒラメ釣りで根掛かりする人は下手クソ」。これは2年前に根掛かった記者が中井船長から言われた言葉だ。ヒラメ釣りというとベタ底のイメージがある。確かにヒラメは底にいるが、自分より上を泳いでいる餌を探している。これは上を見やすい位置に目がついていることからも想像に難くないだろう。つまり、ベタ底だと餌のイワシはヒラメとほぼ同じ位置にいることになり、釣れる可能性が低くなる。「着底したらリールを1~2回巻いて底を切る」の大きな理由はこれだ。もう1つは「オマツリ防止」。着底後に底を切らないとオモリを引きずることになり、他の人のラインと絡む可能性も高くなる。根掛かりは自分が楽しくないし、オマツリは周りにも迷惑を掛ける。何より釣れる可能性が下がるとあれば、底は切るべきだろう。
▼大原「力漁丸」【電話】090・7210・7492。集合午前3時30分、活きイワシ&氷付き1万3000円。現在、オニカサゴ、シマアジ&イサキ、餌木マダコ、テンヤマダイを受け付け中。女性、中学生以下は割引あり。※それぞれ最低出船人数があるため、出船状況と狙いの魚種などは必ず電話などで確認を。