医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

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 人間は利己的な生き物である。「進化論」を書いたダーウィンがそう言っている。

 700万年前、アフリカのサバンナに人類の祖先、原人が生まれた。しかし、利己的な原人の集団は絶滅していった。少し利他的な集団は子どもの数を多く産み、育て、繁栄していったという。

 人間は利己的な生き物であると同時に、社会的な生き物である。社会がうまくまわるためなら、多少の犠牲を払っても貢献したいと思うように出来ている。社会が成り立たなければ、自分も生きていくことができないと知っているからだ。

 アメリカのカーネギーメロン大学の研究に、おもしろいものがある。ボランティア活動をしている高齢者のほうが、していないグループに比べ、高血圧になるリスクが40%も少ないというのである。

 だれかのために体を動かしたり、だれかのために役立っているという充実感が、血圧を安定させてくれるのだろう。

 ぼくたちは資本主義という競争社会を選んだ。だから、自分のために生きていい。しかし、99%は自分のために生きても、1%は自分でないだれかのために生きることで、健康的に生きられる。

 会社の組織も、おれが、おれがというスタンドプレーヤーだけだとうまく機能しない。お互いにフォローし合える関係のほうがチームとしてはうまくいくのは言うまでもない。

 企業もまた、1人勝ちをするよりも、社会全体のことを考え、社会貢献を果たす企業のほうが生き残りやすい。

 1%でもいいから、だれかのために生きてみると、人生が豊かでおもしろく、そして健康になるのである。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。