医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

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 健康というと、禁欲的で、ともすると無味乾燥な生き方を想像するかもしれない。しかし、人生を楽しむことは健康にもいいことなのだ。

 厚生労働省のデータでは、人生を楽しんでいない男性は脳卒中による死亡が1・75倍、狭心症や心筋梗塞による死亡が1・91倍高くなる。

 女性は男性よりも6歳以上長生きだが、それは女性の生き方にも秘密があるのではないか。「わあ、きれい」「おいしい」「かわいい」…。女性は、相手と感動を共有しながら、感動を増幅させているように見える。そこへいくと男は、この程度の食べ物や景色で感動できるか、と値踏みしてしまいがち。感動も薄いし、イマイチ楽しめない。

 ハーバード大学は、自己評価で「自分が幸福だ」とする学生と、幸福感が低かった学生を16年間追跡し、収入を比較した。その結果、幸福感が低かった学生に比べて、幸福感が高かった学生は、生涯収入の年収換算で平均2万5000ドルも多いということがわかった。幸福感の自己評価と収入が関係あるなんて、ちょっとおもしろい。

 前向きな意欲や気力、楽観的な姿勢が高齢者の寿命を延ばすというのは、スウェーデンのウメオ大学の論文。楽観的で高い意欲をもつ人の5年後の生存率は56%、ふつうと判定された人は39%だった。

 意欲的で、たくさん感動する心の若さ。いつもいい可能性があることを忘れない楽観力。そして、自分は幸福だと思う力は、人を健康にする。

 健康は、人生の目的ではない。健康は、人生を楽しむための道具である。そして、人生を楽しむことが、さらに健康へと導いてくれるのだからありがたい。

 今回が最終回。みなさんの健康と幸福を祈っている。(終わり)

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。