肺がん治療30年のスペシャリスト、国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎先生(57)が、最新の肺がん治療を教えてくれます。

【肺がん以外にもオプジーボは効くの?】

 日本で免疫チェックポイント阻害薬オプジーボは、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部(けいぶ)がんに対して承認されています。

 悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、頭頸部がんに対しては、これまでの標準的な治療と比較して、オプジーボで治療した方が、患者さんの寿命が長いことが証明されています。ホジキンリンパ腫に対しては、70%以上の患者さんで腫瘍が縮小することが示されています。これらの患者さんに対しては条件が合えば、保険診療として使用することができます。

 オプジーボ、キイトルーダなどの免疫チェックポイント阻害薬は、その他にも多くの種類のがん患者さんに対する研究が行われています。上記のがんに加えて、胃がん、膀胱(ぼうこう)がんなどの尿路上皮がんに対しても近い将来、承認されると期待されます。

 それ以外にも、食道がん、肝細胞がん、小細胞肺がん、悪性胸膜中皮腫、膠芽腫、卵巣がん、胆道がん、乳がんなどでも研究が行われており効果が期待されています。免疫チェックポイント阻害薬は一般的な大腸がんに対してはあまり効果を発揮しませんが、遺伝子修復に異常がある特殊なタイプの大腸がんに効果があることが報告されています。このような大腸がんは、家族性大腸がんの1つであるリンチ症候群の80~90%、それ以外の大腸がんの2~3%といわれています。

 免疫チェックポイント阻害薬が使用できる患者さんは、現在は悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がんに限られていますが、今後はさらに多くのがん種の患者さんに適応が拡大するものと考えられています。

 ◆ホジキンリンパ腫 悪性リンパ腫の種類の1つ。日本での発症頻度は低く、悪性リンパ腫の約10%。20歳代と50~60歳代の2つの年代で増加傾向にある。

 ◆大江裕一郎(おおえ・ゆういちろう)1959年(昭34)12月28日生まれ、東京都出身。57歳。東京慈恵会医科大学卒。89年から国立がんセンター病院に勤務。