東京・新宿区の「新宿さくらクリニック」は、新患の外来患者が年間2000~2500人を数える国内トップの診療所。性感染症に豊富な臨床経験をもつ澤村正之院長は、患者の平均年齢がこの12年間で3歳以上高齢化したという。

 「若年人口の減少と関係がありそう。病気の特徴としては非淋菌(りんきん)、非クラミジア性尿道炎が2010年をピークに半減し、淋菌感染症、性器クラミジア感染症はほぼ横ばい。尿道炎の数が減っていることを考慮すると、こうした病気にかかっている人の割合である有病率は上がっているのではないでしょうか」(澤村院長)

 技術の進歩は検査を行う側のモラルが問われる。

 「調べなくてもいいことが分かってしまうことがかえって混乱させてしまう。技術に合わせて、それを利用する側の知識、倫理が問われてくると思います」(澤村院長)。

 たとえばパートナーへの告知は慎重さが必要だ。一律の告知は夫婦やパートナーの関係を壊しかねない。患者としても医師とのコミュニケーションが大切だ。検査も同様で患者の立場で考えてくれる存在が頼もしい。

 「私のモットーは、お金のために意味のない検査はしないこと。検査で陰性だったとしても症状から感染を疑う場合は、調べたところに原因となる菌などがいなかっただけだとして、検査に頼らずに治療に入ります」(澤村院長)。

 検査をためらう患者も多いが“犯人捜し”になっては元も子もない。

 「たとえばHIV感染の検査をした方がいいときなど、検査で突き止めるというのではなく、病気にかかっていないことを確かめるため、安心するためですよと伝えています」(澤村院長)。