ネット依存の子どもたちにどう対応するのか。「成城墨岡クリニック」の墨岡孝院長(精神科医)はこう話す。

 「親に対してカウンセリングをします。特に親の知識はネット止まりなので、子どもの詳しいスマホの世界について、知らない場合が多いのです。まずはそうした知識を身に付けてもらうことと、そのままでは危険だということを理解してもらい、今度は本人を連れてきてもらうよう努力してもらうのです」

 その後、本人が来院すると、薬は使わずにカウンセリングを中心とした「認知行動療法」を実施する。認知行動療法について墨岡院長が続ける。

 「例えば、自分がどれぐらいネットにとらわれているのかを、日記とかタイムスケジュールなどを書き出すことで理解させます。そして話の中で、本当は自分が何をやりたいのか、あるいはネットにこんなに時間を費やしているが、もっといいことができるんじゃないか、そのようなことを分かってもらうようにする。だいたい4~5カ月かかります」

 通常、子どもがネットに夢中になり、言うことを聞かないと、親はつい厳しく対処しがちである。しかしそれは誤り。もしもいきなりWi-Fi(ワイファイ)を切断したり、スマホを取り上げようとするが、それではまるで逆効果になると墨岡院長は強調する。

 「それまで厳しくしていたのを少し緩くするのです。交換条件などを出してとにかく連れて来さえできれば、そこからスタートできる。親が変わると子どももかなり変わります。もっとも進学や進級の問題があって過剰に心配したり、不安を持つのは仕方ないが、本人をもっと信用するなど、1歩離れて、本人の様子を見ることが大切です」

 認知行動療法の過程は、例えば大人になったら何をしたいのか、といったいわゆるアイデンティティー(自己肯定感や個性)を取り戻す地道な作業だ。こうした「回復」に向かうプロセスは、大人であっても同様だという。