「日本はスマホの導入が遅れました。ガラケーが他国より進歩していたためで、欧米に比べて標準型のスマホは遅かった。そのため、日本ではまだスマホはオモチャのような使い方が多い。欧米では成熟していて、スマホで調べものをする、仕事のために使うといった用途のはっきりしたことが多いのです」

 こう話すのは、「ネット依存から子どもを救え」(光文社)の共著者で「成城墨岡クリニック」の墨岡孝院長だ。コミュニケーションやゲームといった使い方は、東南アジアにも多い傾向だという。

 「今、スマホの普及で対面する機会が少なくなっているので、会わないでも用事が済んでしまうが、そもそもコミュニケーションを機械に頼るようになったのは良くないと思います。リアルな人間関係はやはり対面が基本なので、いくら知識として持っていても役に立ちません」

 1人の人間としての一生を考えると、リアルな世界での接点が少なくなることが好ましくないことは明らかだ。

 「もちろんスマホには、例えば発達障害の子どもたちにとってはコミュニケーションが取りやすいといった、便利で良い面もあります。つまり、自分が何のためにスマホを使うのか、ネットを使うのかという、きちんとした目的意識が大切です。それらは道具であり、自分がそれを使うんだという意識が必要だと思います」

 ネット、スマホ依存は、人としての生き方が何なのかを問いかけている。

 「人間は手足を使って動かないと、本当の知識、認識を得ることができません。例えば観光地の風景をネットで見たとしても、実際にそこに行き、自分が歩いて感じるということが自然なかたちだと思います」

 ネットもスマホも、使い方次第だという基本を忘れずに。次回よりネット依存治療の第一人者で、「久里浜医療センター」の樋口進院長へのインタビューをお伝えしよう。