ネット依存治療の第一人者、「久里浜医療センター」の樋口進院長に聞く。

 樋口院長 「ニップ」と呼ばれる治療があります。ニップとはニューアイデンティティープログラム(NIP)の略で「新しい自分を見つけよう」というものです。たとえば午前中、体育館で運動をしてもらいます。ネットのしすぎで運動不足の人が多いので、みんな楽しんで運動します。昼はいっしょに食事を取りながらミーティング。生活の仕方などに関することなどが話題です。午後は「認知行動療法」を実施します。これは何かのテーマについてみんなで意見を言い、妥当な結論を導いていくというものです。

 ◆質問 具体的には?

 樋口院長 自分が費やしたゲームの総時間は何時間なのかを計算し、それをほかのことにあてがっていたらどれほど有効だろうか。お金をどれだけ使ったのか、それだけの時間と金を勉強にあてたら、今ごろはどうなっていただろうか。グループの中で、ゲームの良い面、悪い面は何かをみんなで話し合うと、自分は良い面しかわからなかったが、悪い面もあるんだといった気づきを得られます。

 実際に治療を受けてゲームをやめることができた、時間を減らせたといった人の実体験に触れる機会もあります。治療の手本になるし、他人と比べてみることができるメリットもあります。

 ◆質問 治療の効果は?

 樋口院長 こうした取り組みは「アルコール依存症」の治療に似ています。当初はあまりうまくいかないのではないか、と思っていましたが、やってみるとそれなりにうまくいくようになりました。回復してよくなった子どもたちが大勢います。とはいえ、治療にはとても手間がかかるので、指導する方はそれをよく理解しておかなければいけません。

 「教育」も大切です。インターネット依存によりどういう影響が出てくるのか、あるいはネットに代わる活動には何があるのかを探っていくのです。