今年1月31日、厚生労働省で薬物報道に関する記者会見が開かれた。会見で「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」が、テレビ、新聞などのメディアによる過剰な報道がプライバシーや著作権を侵害する危険性について指摘し、「薬物報道ガイドライン」を作ることを提案した。昨年7月に結成したネットワークには、依存症関連の市民団体、当事者団体、家族、治療者、研究者らが加わっている。

 ガイドラインでは、メディアの報道が薬物依存の当事者、治療中の患者、支援者、その家族や子どもなどへ強い影響を与えることへの理解を求めている。さらに、薬物依存症は犯罪につながるという印象が強いが、(1)医療機関や相談機関を利用することで回復可能な病気だということ、(2)相談窓口の紹介と警察、病院以外に「出口」があること、(3)友人・知人・家族がまず専門機関に相談すること、などを理解し伝えることが望ましいとした。

 また、番組や紙面等で「白い粉、注射器」といったイメージカットを用いない、薬物への興味をあおるような内容にしない、人格を否定する表現を避ける、といったことも列挙。逮捕された有名人が薬物依存に陥った理由を臆測し、使用が必然であったかのように取り上げない。あるいは「薬物使用疑惑」をスクープにしないよう求めている。依存症への偏見や差別の助長といった「弊害」を生む可能性があることも、指摘している。

 繰り返し強調されるのは、「犯罪からの更生」という文脈だけではなく、「治療や回復が可能だという事実」を伝えることだ。依存症の背景には、貧困や虐待といった社会的問題が根深く関わることがある。そのため、薬物依存に詳しい専門家の意見や、回復した人の姿を伝えることも重要だ。依存症からの回復を妨げるような内容ではないのか。ネットの普及で、誰もが情報を発信できるようになった今だからこそ、送り手の課題として重く受け止めたい。