<信頼できる心臓外科医とは(6)>

 心臓と上手に付き合っていくために、心臓の手術はタイミングよく受ける必要があります。循環器内科医が患者さんの状態を診ていて、心臓外科医に紹介します。その患者さんを手術すると、患者さんとその後ずっと付き合いが続くと思っている方が多いようです。-それは違います。同じ病院内の循環器内科、また、クリニックから紹介されると、患者さんは手術後に元の診療科にお戻しする決まりになっています。

 たとえば、私の場合を紹介します。患者さんは紹介状を持って受診されます。私は初診の患者さんを診て、手術が必要であれば、手術に向けた対応、準備をしていきます。手術に対する質問には真摯(しんし)にお答えし、十分納得いただいたうえで手術となります。

 ただ、術後はなかなか患者さんに会う時間がないのが現状。私が開発した大動脈弁の手術を「教えて欲しい」と、欧米諸国の病院に呼ばれることが多いのです。欧米の場合は、出張すると少なくても1週間は戻れません。それでも、病室に顔を出せるときは必ず顔を出すようにしています。

 「尾崎先生に手術してもらって良かった」「先生の顔を見てほっとした」「先生の顔を見るのが何より薬になります」などと声をかけていただくと、うれしい。私は患者さんと向き合う時は、常に患者さんの立場に立って話を聞いています。患者さんからの言葉は、患者さんに真摯に向き合えている証拠です。また、患者さんへの心臓外科チームのコミュニケーションがきちっととれているからです。チームワークの良さは大きいと思います。

 患者さんの退院後は、半年に1度の定期検査を受けてもらっています。そのときは、私は患者さんにお会いできませんが、担当医からすべて状態は聞いて認識しています。「チームとして患者さんのQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)にはしっかり対応できている」。これが患者さんから信頼される重要なポイントです。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)