「亭主関白」も「かかあ殿下」も、激しすぎれば離婚に至るかもしれませんが、離婚はその後の人生において「男女格差」をもたらします。というのも、離婚すると、男性では死亡率が2~2・5倍に高まるというデータがあるのです。

 その理由としては、男性は独り身になると、外食や添加物の多いコンビニ弁当など食べ物が偏りすぎるということや、誰も心配しないのでお酒を飲む量が増えるなど、健康管理がずさんになりやすいからかもしれません。

 一方、たとえ一時的に落ち込んだとしても、女性は気持ちの切り替えが早く、過去のことは忘却し、第2の人生を楽しもうと前向きです。離婚は男女共に、結婚の数倍のエネルギーを使うといわれていますが、ダメージの大きいのは男性の方であるようです。

 また、亭主関白の傾向が強い夫は、夫婦の立場が平等である夫より死亡率が高いということが、米ミシガン大学の研究で分かりました。亭主関白な人は、病気などが原因で死ぬ可能性が、亭主関白でない人より20%多く、事故や殺人(!)などが原因で死ぬ可能性も2倍以上多いそうです。

 亭主関白を貫く男性は、家庭以外でも社会的にも権力を得ようとして、周囲の人たちと争う傾向が強い。リスクがある行動を取りがちになり、ストレスが多くなることが想像されます。ストレスが多いと交感神経が高ぶり、心臓や脳の血管が収縮しやすく、心筋梗塞や脳梗塞になりやすいのではないかと考えられます。

 デンマークのコペンハーゲン大学の調査によると、独身または離婚した40~50代男性の早期死亡率は約2倍でした。1953年生まれの男性2500人が調査対象でしたが、核家族化した50年代に大家族の中で育たなかった彼らは、他人との関係が希薄になったことから、何人かは自殺をしたり、アルコールに起因する病気によって亡くなったようです。

 また日本人男性の50歳までの死亡率を見ると、妻帯者が3・7%なのに対し、未婚者は11・1%と、3倍も高くなっています。そういう意味では、逆に「かかあ天下」の妻も健康に良くないのかもしれません。お互いにいたわり合う「男女平等」が、夫婦の健康には一番なのでしょう。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。