厚生労働省が掲げる「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」では、「栄養・食生活」「身体活動・運動」「休養」「飲酒」「喫煙」「歯・口腔(こうくう)の健康」の6つに留意することが、生活習慣病の発症や重症化を防ぐポイントと定義されています。しっかりかめる歯がなければ、おいしく食べることができませんから、口腔(こうくう)環境と食習慣が密接なのは、言わずもがなですね。ではいったい、歯を守る食事というのはどんなものがあるのでしょうか。

 2005年に世界保健機関(WHO)が発表した「歯と口腔の疾患および健康に関する食事」という総説を中心に、さまざまな研究データから、その一部をご紹介します。

 (1)肉や魚、大豆等に含まれる良質なタンパク質をしっかり取ること。必須アミノ酸が不足すると、免疫系統が低下し、歯周病リスクが上がります。なによりタンパク質は、筋肉など身体をつくる材料なので、オーラルフレイル予防の観点からも欠かせません。

 (2)抗酸化物質(ビタミン、ミネラル、ポリフェノール)を含む食品は、歯周病菌によって引き起こされた炎症刺激で生じるフリーラジカルを無害化するので、歯周病予防に効果的です。体内で作られる抗酸化酵素は加齢とともに減っていきますから、果物や野菜、お茶やコーヒー、ナッツ類等を毎日の食事で補給するよう心掛けましょう。

 (3)熱すぎる飲み物や炭火焼きは、口腔がんの危険因子になるので要注意です。逆にビタミンCを含むかんきつ系の果物や野菜、玄米などの全粒穀物は、予防因子になります。

 (4)チーズ(特にハードタイプ)はシュガーレスガム同様、虫歯の予防に効果的です。食後にゆっくりハードチーズをかじることで、カルシウムやリンといったミネラル成分が唾液中にとどまり、歯の再石灰化を促してくれます。口の中を酸性にしてしまうワインとの組み合わせは、この効果がなくなってしまうので、気をつけましょう。

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。分かりやすい解説はテレビ、ラジオでもおなじみ。昨年出版した「歯科医が考案・毒出しうがい」(アスコム)は反響を呼び、ベストセラーとなった。近著に「『噛む力』が病気の9割を遠ざける」(宝島社)。女性医師のボランティア活動団体「En女医会」会長。