かむ運動は1歳半ごろまでという非常に早い時期に基礎が完成するといわれています。どのような点に注意したら良いのでしょうか。

母乳を吸う機能は顎の発育を促進するとされ、発達の基盤になります。離乳食を食べるようになると、「ゴックン口唇食べ期」「モグモグ舌食べ期」「カミカミ歯茎食べ期」という順序で進化していき、歯が生えると「カチカチ歯食べ期」となります。やがて2歳半ごろには乳歯は生えそろい、完成します。大切なのは、それぞれの成長過程に合った食品を与えてかむ機能とそれに伴う消化吸収機能を発達させることです。

離乳初期(5~6カ月)は1日1回を目安にアレルギーの心配がない炭水化物からスタートしましょう。ポタージュぐらいの軟らかさのつぶし粥(がゆ)を与え、慣れてきたら野菜をすりつぶしたものにもチャレンジです。

離乳中期(7~8カ月)は1日2回に増やします。舌でつぶせる硬さ(プリンや豆腐程度の硬さ)を目安に、赤ちゃんが飽きないようなバリエーションの工夫が必要です。卵の白身にはアレルギーを起こしやすい成分が含まれているので、よく火を通した卵黄から与えるように気を付けてください。

離乳後期(9~11カ月)は1日3回、歯茎でつぶせる硬さ(バナナ程度)を、離乳完了期は歯茎でかめる硬さ(煮込みハンバーグ、軟らかいごはん程度)といった具合に変化させていきます。

離乳期は調味料を加えない薄味が基本ですが、幼児期前半(1~2歳)になったら砂糖や油などを少量加えてみましょう。歯が生えそろう幼児期後半(3~5歳)は、少し硬い野菜やお肉をしっかりかんでモグモグ動かす練習を。味覚が発達していく時期ですから、大人が食べるような濃い味付けや刺激物は避けつつ、新しい味の体験を増やしてあげることが理想的です。

共働きの家庭も多いですから、こういった知識を共有し、家族みんなでサポートできると良いですね。

◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。分かりやすい解説はテレビ、ラジオでもおなじみ。昨年出版した「歯科医が考案・毒出しうがい」(アスコム)は反響を呼び、ベストセラーとなった。近著に「『噛む力』が病気の9割を遠ざける」(宝島社)。女性医師のボランティア活動団体「En女医会」会長。