ひところ、「新型うつ病」という言葉がはやった。新型うつ病は、例えば会社に行けなくなった若者が、休んで遊びに行ったら元気になったといった例を、単なる「甘え」だと、やゆする意味を含んでメディアの間でもてはやされた。しかし、医学的には否定された考え方である。「うつが治る食べ方、考え方、すごし方」(CCCメディアハウス)の著者で、「新宿OP廣瀬クリニック」(東京都新宿区)の廣瀬久益(ひさよし)理事長はこう話す。

「うつ病の概念が拡大したためだといえます。内因性と呼ばれる従来型のうつ病というのは、遺伝的なものも含まれ、ある意味防ぎようのないものですが、いま一番問題になっているのは、ストレスがかかり過ぎている“うつ状態”なのです。

例えば人間関係の負荷や家族問題、仕事の悩みなどです。そして、今の競争社会で勝つことを求められて挫折していくわけですが、そうではなく、例えば、出世のために単身赴任を命じられたら、心の平安がつぶされることになる。その時に、きちんと自分の生き方を考えてほしい。仕事に対する自分の思いや家族に対する思い、といったものをきちんと考えることができる生き方をしてほしいと思うのです」

抽象的とはいうものの、自分自身が誰かの言いなりになって、意にそぐわない生き方をしてはいないか、そこに気づいてほしいというのである。

「やはり、自分を大事にするということではないでしょうか。大人としておかしいと思うならば。うつ病のように心を病む人に、何も考えないで、競争社会の中で生きてきた人が多いのはそういうことです。例えば会社での昇進と経済的な価値が一番だと思っている人ほど、病みやすいのです」

実は、素直で繊細な心の持ち主ほど要注意。逆に漫画のドラえもんに出てくる「ジャイアン」のように、自分の言いたいことを言い、人とトラブルになっても、時間がたてば後腐れがなくなるタイプには、無縁だといえるそうだ。