<インフルエンザ対策>

最近は1年を通してマスク姿の人が目につきます。冬が来てインフルエンザが流行すれば必ず「マスク着用」が指摘されますが、「インフルエンザ予防に、マスクやうがいは意味がない」という情報も飛び交って、いったいどっち? と問題になっているのです。

厚労省のホームページには、昨年11月の記述でこうあります。「やむを得ず外出して人混みに入る可能性がある場合には、ある程度、飛沫(ひまつ)感染等を防ぐことができる不織布(ふしょくふ)製マスクを着用することは1つの防御策と考えられます」。

しかし、同じ厚労省の見解で、マスクをすることは「感染拡大を防ぐのに有効だが、自分を守る手段としては推奨していない」というものもあります。ほんとうはどちらでしょう?

海外では感染者のみがマスクを着用し、予防のためにはマスクを着用しないのが一般的のようです。ただ、日本では人混みも多く、マスクをする意義は少なからずあると感じます。

感染予防としてマスクをすることは、せきやくしゃみによるウイルスを吸い込む「飛沫感染」の危険を低減させ、逆に患者は、せきやくしゃみを飛ばさないようマスクをすることにも意義があります。

もう1つの感染経路は、ウイルスのついたドアノブなどを触った手で、口や鼻に触れることでウイルスを取り込む「接触感染」ですが、これはマスクで完全に防ぐことは難しいかもしれません。

マスク予防の効果について、米ミシガン大学が実施した研究があります。インフルエンザの流行期(1~3月)、大学寮に住む健康な学生に「マスク着用」「マスク着用&手洗い励行」「何もしない」の3つグループに分け、インフルエンザの症状を起こす人がどれだけ出るか、調べたもの。「何もしなかった」人は、発症者が時間がたつと増えたのに対し、「マスク」の人の発症は少なくなり、「マスクと手洗い」では、さらに減ったといいます。

ただ、うがいに関しては、飛沫を吸い込むとウイルスは20分以内で細胞に侵入してしまうため、帰宅後に行ってもインフルエンザに関する予防効果はないと考えられるようになってきて、厚労省も推奨しなくなりました。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。