他人がやっていると、やたら気になるのが、貧乏揺すりです。「単なる癖。大目に見て」と言われるかもしれませんが、どうしても落ち着かず、気が散ったりします。

その語源については、諸説あります。「貧乏人が寒くて震える様子から」とか「江戸時代に足を揺すると貧乏神にとりつかれると、いわれていたから」とか「貧乏人がせかせか動いているように見えるから」など、です。どれもあまりいいイメージではないので、子どものころ「やめなさい! お行儀の悪い!」と叱られていたわけです。

このように評判の悪い貧乏揺すりですが、実はさまざまな健康効果があるのです。いくつかご紹介しましょう。

(1)軟骨の再生 貧乏揺すりは変形性関節症のリハビリに取り入れられています。特に股関節の軟骨の再生に有効であることが知られ、約6割で軟骨の生成を促す効果がみられます。

(2)手足の冷え解消 貧乏揺すりはかかとを上下させる場合が多く、ふくらはぎの運動量が多いですが、血行がよくなるため冷え性対策に効果があります。貧乏揺すり開始後5分で、皮膚の温度が平均約2度上昇したという調査報告もあります。

(3)エコノミークラス症候群の予防 ふくらはぎの筋肉の伸縮は、血液をポンプのように心臓へ送り返す働きがあります。この筋肉が動くことで血流がよくなり、血栓ができにくくなります。

(4)足のむくみ改善 足のむくみは、ふくらはぎ周辺に体内の水分などがたまってしまうことで起こります。貧乏揺すりで血流がよくなることで、むくみの改善にも効果があります。

(5)集中力アップ 貧乏揺すりには、気持ちをリラックスさせる効果もあり、集中力を高めます。勉強や仕事に集中しているとき、無意識に貧乏揺すりをするのは自然な行為といえます。

(6)ストレス解消 貧乏揺すりによる振動で、精神を安定させる「幸せ物質」セロトニンが分泌されます。余分なエネルギーを発散できるので、イライラ解消などにも効果的です。

体にとってメリットが多いのですから、これからは「貧乏ゆすり」ではなく、「健康ゆすり」と呼びましょう!

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務める。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。