本紙で前回、男性の泌尿器科の病気を説明してくれた、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟氏(59)が、「女性の頻尿・尿失禁」についてお話しします。日本女性の約2500万人もが、オシッコで困った経験を持っているというデータがあります。そのうち成人女性の約400万~500万人が尿失禁を経験、また頻尿に悩んでいる人も少なくありません。それでいて受診をためらう女性が多いことに、同氏は「我慢しないで相談して!」と診察を勧めています。

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頻尿や尿失禁を改善するには、まず排尿のメカニズムを知ることが必要です。尿を作り排せつするのは、腎臓、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道から成る泌尿器の役割です。これらの器官が協調して働いてくれているおかげで、私たちはスムーズに排尿できるのです。1日の尿の量は約1000~2000ミリリットル。健康な成人の1回の排尿量は約300ミリリットルといわれています。

まず、腎臓が全身から集められた血液をろ過。必要な成分は再吸収され、最終的に不要になったものが尿となります。こうして腎臓で作られた尿は尿管へと送り出され、蠕動(ぜんどう)運動によって膀胱に送られます。

膀胱は伸び縮みする袋のような臓器で、尿をためる機能と排せつを助ける機能をもっています。我慢すれば500ミリリットルほどの尿をためられますが、通常は250~300ミリリットルほどたまると「いっぱいになったよ」という信号が、膀胱から脳に送られます。これによって尿意が起こり、わたしたちはトイレに行くのです。準備OKとなると「よし、出していいよ」という信号が今度は脳から膀胱と尿道に送られます。そこで尿道が開き、同時に膀胱がポンプのように収縮して尿を押し出す仕組みなのです。

もう少し詳しく見ていきましょう。尿が膀胱にたまっていくときは、主に自律神経の交感神経が働き、膀胱の筋肉は緩んで徐々に広がります。逆に、尿道の筋肉は尿をもらさないようにしっかり閉じています。尿道の周りには内尿道括約筋という平滑(へいかつ)筋と、外尿道括約筋という横紋(おうもん)筋があり、前者は内臓や血管壁の筋肉と同様、自分の意思で動かせませんが、後者は手足の筋肉と同じで動かせます。

尿がある程度膀胱にたまると、脊髄の神経を通して脳に信号が送られ、尿意が起こります。しかし、すぐにトイレに行けないときは「まだ出したらダメ!」という指令が、脳から膀胱と尿道に送り返されるのです。すると、外尿道括約筋や骨盤底の筋肉などが連携して尿道を締め、もらさないようにがんばります。わたしたちが我慢できるのはこのためです。

準備が整い「出していいよ」の指令が出ると、主に副交感神経が働き、尿道が緩むと同時に、膀胱の筋肉が収縮して尿を押し出します。このように脳、神経、膀胱、尿道が「緩める」「締める」を協調して行い、「蓄尿」(尿をためる)と「排尿」をコントロールしているわけです。