本紙で前回、男性の泌尿器科の病気を説明してくれた、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟氏(59)が、「女性の頻尿・尿失禁」についてお話しします。日本女性の約2500万人もが、オシッコで困った経験を持っているというデータがあります。そのうち成人女性の約400万~500万人が尿失禁を経験、また頻尿に悩んでいる人も少なくありません。それでいて受診をためらう女性が多いことに、同氏は「我慢しないで相談して!」と診察を勧めています。

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尿失禁や尿排出障害の原因を突きとめる重要な検査に「ウロダイナミックス検査」があります。単純な尿失禁に見えても、裏に深刻な病気が隠れていたり、複雑な要因がからみあって起こっていることがあります。また本人の訴えと実態が異なっていることもあるため、必要に応じて行われる検査です。膀胱(ぼうこう)や尿道の実態を客観的に把握し、どこにどんな問題があるか、その程度はどのくらいか、を突きとめることが大切なのです。

このウロダイナミックス検査には、適切な治療法を選択するため、数種類の検査法があります。主なものを紹介しましょう。

◆尿流測定検査 尿の出始めから終了まで1秒当たりにどのくらいの量の尿が、どのくらいのスピードで出ているか、を調べます。尿が勢いよく出ているかどうか、がわかります。患者さんに測定装置付きの「専用トイレ」で排尿してもらうだけで、センサーが自動的に平均尿流率や最大尿流率、排尿量、排尿時間などを測定します。最大尿流率が15ミリリットル未満のときや、排尿が終わるまで30秒以上かかっているときは「排尿困難」が疑われます。

◆膀胱内圧測定 膀胱に生理食塩水を少しずつ注入し、膀胱内の圧力の変化を測定。膀胱のためる機能や尿を押し出す力が正常に働いているか、を調べます。切迫性尿失禁では、ためる機能に障害が起き、勝手に膀胱が収縮して出してしまいます。逆に溢流(いつりゅう)性尿失禁では、押し出す力が弱くて尿が残ってしまいます。

◆尿道内圧測定 尿道の内圧を測定することで尿道を締める力が十分あるかを調べます。腹圧性尿失禁は尿道をしっかり締め切れないことから起こるため、この検査で尿道括約筋の能力がどれだけあるか、がわかります。この尿道内圧測定は、ほとんどの場合膀胱内圧測定と同時に行われます。次回も、ウロダイナミックス検査の種類を紹介します。