北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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前回、生活習慣が元になった内臓脂肪型肥満をきっかけに、ドミノ倒しのように次々と病気が引き起こされるメタボリックドミノの話をしました。ウィズコロナの時代では、コロナを重症化させるメタボリックドミノを止め、下流にある疾患を招かないようにすることが極めて重要だと思います。

コロナで糖尿病の人はなぜ重症化しやすいのでしょうか。糖尿病の人はさまざまな感染症にかかりやすく、重症化しやすいことが知られています。皮膚の感染症である水虫の頻度は非常に高いですし、細菌感染による歯周組織の慢性炎症である歯周病とも糖尿病は深い関係があります。

糖尿病はインスリンが十分に働かないため、血液中にブドウ糖が増え、慢性的に血糖値が高くなる病気です。細菌やウイルスと戦う白血球は、一定のブドウ糖濃度の中で戦えるようにできています。高血糖という環境にさらされると、機能が落ち、結果として外敵をやっつける力が弱くなると考えられています。

転んで傷ができた。これまでだったら、かさぶたができて治っていたものが、いつまでたってもグジュグジュして赤く腫れ上がっている。おかしいと思って病院で調べたら、高血糖と分かったという方が私の患者さんにいます。

大切なのは血糖コントロールです。血糖値を上げるのは、通常、糖質だけです。糖質は控えるが、タンパク質や脂質はどんどん摂取するロカボ(ゆるやかな糖質制限)は、血糖値を急上昇させない食事法です。

◆山田悟(やまだ・さとる)1970年(昭45)、東京生まれ。慶応大医学部卒。糖尿病専門医として多くの患者と向き合う中、カロリー制限による食事療法の限界に直面し、ロカボを提唱している。「糖質制限の真実」「カロリー制限の大罪」(ともに幻冬舎新書)など著書多数。