北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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コロナでは大相撲三段目の勝武士さんが28歳で亡くなりました。体力はあるはずですし、年齢も若く、本来なら簡単に重症化しないはずですが、糖尿病を患っていたと聞きます。前にお話ししたように高血糖があることで、免疫機能は低下します。世界保健機関(WHO)は、新型コロナの致死率は約2%だが、糖尿病を患っていると9・2%にはね上がると発表しています。

他の競技のアスリートに比べると、力士は特殊です。体重がないと当たり負けしてしまうため、太って体を大きくします。太るためにはエネルギーをたくさん取り入れなければいけませんが、タンパク質や脂質は満腹感をつくり、それが持続するため、大相撲では満腹感を刺激しにくい糖質を増やすことで、エネルギーをより体に入れようとします。

インスリンが十分出せる人なら、ただ太るだけで済みます。家を壊してフォークリフトで搬出しないと、病院に運ぶことすらできない、すごい肥満の人が時々テレビで紹介されますが、すさまじくインスリンが出せる人です。欧米人と比べると、インスリン分泌能力が低い日本人はあそこまで太ることはできません。

勝武士さんも食べた糖質量に比べインスリン分泌が少ないため、血管内のブドウ糖を細胞に取り込むことができず、高血糖になってしまったのだと思います。簡単にエネルギー摂取を増やすため、糖質に偏るのはいたしかたない側面もあります。しかし、糖質を減らしてタンパク質と脂質を増やしていたら、体脂肪ではなく筋肉で体重を増やすことにつながったでしょう。コロナで重症化することはなかったのではないかと思います。

◆山田悟(やまだ・さとる)1970年(昭45)、東京生まれ。慶応大医学部卒。糖尿病専門医として多くの患者と向き合う中、カロリー制限による食事療法の限界に直面し、ロカボを提唱している。「糖質制限の真実」「カロリー制限の大罪」(ともに幻冬舎新書)など著書多数。