北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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糖尿病の食事療法といえば長らくカロリー制限でした。米国糖尿病学会は1971年、「最も重要なのはエネルギー摂取量の適正化で、それによって肥満を是正することが主眼である」というガイドラインを出しています。

しかし、91年に1日<1>1200キロカロリー<2>1600キロカロリー<3>1700キロカロリー-と3パターンのカロリー制限をして、どの食事法が減量効果があったか比較研究した論文が発表されました。いちばん減量効果があったのは1700キロカロリーで、最も効果が弱かったのは1200キロカロリーでした。

カロリー制限を指示しても、アウトプット(結果)としてのカロリー制限につながらない。米国糖尿病学会は94年にガイドラインを改定したとき、「高血糖を是正し、高脂血症や体重管理を改善する食事はすべて糖尿病の食事療法とする」と間口を広げました。

このときはまだ、それではどういう食事法がいいのかという答えはありませんでした。2013年までに20年近くかけて絞り込まれていったのが<1>糖質制限食<2>ベジタリアン食<3>野菜、魚介類を多く摂取し、オリーブ油を用いる地中海食<4>塩分、糖質を抑え、ミネラルや食物繊維が豊富な野菜や乳製品をとるDASH食<5>脂質制限食です。

サポートする論文はそれぞれありますが、最もエビデンス(科学的根拠)が高い無作為比較試験に基づく論文数が多かったのが糖質制限食です。米国糖尿病学会は19年、糖質制限食が血糖の改善に対し、いちばん有効性が高い食事法であると改定しました。日本では今もカロリー制限が推奨されています。日本人は肥満にならなくても糖尿病になることは、これまで繰り返しお話ししてきました。流れはどちらに向かっているか。お分かりいただけるでしょうか。

◆山田悟(やまだ・さとる)1970年(昭45)、東京生まれ。慶応大医学部卒。糖尿病専門医として多くの患者と向き合う中、カロリー制限による食事療法の限界に直面し、ロカボを提唱している。「糖質制限の真実」「カロリー制限の大罪」(ともに幻冬舎新書)など著書多数。