北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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連載8回目で、(1)1日1200キロカロリーで食べた場合(2)1日1600キロカロリーで食べた場合(3)1日1700キロカロリーで食べた場合-と3パターンでカロリー制限を行い、どの食事法が最も減量効果があったかを比較した、米国の1991年の研究を紹介しました。一番効果があったのは(3)で、最もなかったのは(1)です。カロリー制限は厳しく指導すればするほど、良い結果が得られるものではなく、「こんなのやってられない」となると、効果は悪くなるのです。

米国には、極端な糖質制限食とゆるやかな糖質制限食を比較した研究もあります。6週目までは減量効果に差はなかったのですが、10週目で比較すると、ゆるやかな糖質制限食はさらに効果が強まったのに対して、極端な糖質制限食は6~10週目にリバウンドが起こりました。

極端な制限食は、それが糖質制限であっても患者にとってはつらい食事法で、続かなかったということです。短期ではいいかもしれないが、長期では有効性がないということです。

僕は、楽しさこそが行動変容の最大のパワーだと思っています。ロカボ(ゆるやかな糖質制限)は、おいしく楽しく食べて健康になる道を模索します。QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)を落としながらの健康増進は求めるべき道ではないと思っています。

米国では極端な糖質制限食は長続きしませんでした。自分は続けられるという強い意志を持つ人がいるかもしれません。でも、順調に減っていた体重が止まったとき、「つらくないですか。今の食生活を楽しめていますか」と確認したいと思います。極端な糖質制限ではなく、ロカボでおいしく楽しく食べて健康になりましょう。

 

◆山田悟(やまだ・さとる)1970年(昭45)、東京生まれ。慶応大医学部卒。糖尿病専門医として多くの患者と向き合う中、カロリー制限による食事療法の限界に直面し、ロカボを提唱している。「糖質制限の真実」「カロリー制限の大罪」(ともに幻冬舎新書)など著書多数。